「経験を積む」の使い方。仕事・勉強でよく使う表現

2026年10月03日(土) 06時39分13秒

更新: 2026年09月24日(木) 08時57分43秒

「経験を積む」の使い方。仕事・勉強でよく使う表現

次の二つの文を見てください。

「この会社で3年間、営業の経験をしました。」

「この会社で3年間、営業の経験を積みました。」

どちらが自然だと思いますか?

言いたいことは、どちらも何となく分かります。しかし、「3年間働きながら少しずつ経験を増やした」という意味なら、

「この会社で3年間、営業の経験を積みました。」

のほうが自然です。

では、なぜ「経験をする」ではなく「経験を積む」のでしょうか。

「経験」も「積む」も難しい単語ではありません。それでも、この二つを自然に組み合わせられるかどうかは、日本語学習者にとって意外に難しいポイントです。

今回は、仕事や勉強でよく使う「経験を積む」を、似た表現との違いも含めて見ていきましょう。

なぜ「経験をする」と言いたくなるのか

「経験」は英語なら experience、中国語なら「经验」などと訳されます。

そのため、「経験する」という動詞を知っている学習者は、

「仕事の経験をする」
「営業の経験をする」

のように言いたくなることがあります。

しかし、日本語では単語の意味だけでなく、「どの名詞とどの動詞を組み合わせるか」が大切です。

特に「経験」は、長い時間をかけて少しずつ増えていくものとして表すとき、

「経験+積む」

という組み合わせがよく使われます。

日本語では、

  • 経験を積む
  • 努力を重ねる
  • 知識を身につける
  • 条件を満たす
  • 責任を負う

のように、よく一緒に使われる名詞と動詞があります。

一つずつ単語の意味を考えるより、セットで覚えたほうが自然な日本語を作りやすくなります。

「経験を積む」は少しずつ経験を増やすこと

「積む」には、物を上に重ねていくという意味があります。

たとえば、

「箱を積む」
「荷物を積む」

のように使います。

「経験を積む」の「積む」も、このイメージから考えると分かりやすくなります。

一回だけ何かを経験するのではありません。

仕事をする。
失敗する。
覚える。
また挑戦する。
少し上手になる。

このような経験が一つずつ重なっていくイメージです。

つまり、

「経験を積む」

とは、さまざまな活動を続けながら、少しずつ経験を増やしていくことです。

仕事では特によく使う

「経験を積む」は仕事の話で非常によく使われます。

たとえば、

「若いうちにいろいろな仕事をして、経験を積みたいです。」

「まず現場で経験を積んでから、管理職を目指します。」

「彼は海外勤務の経験を積んでいます。」

このように、ある仕事を続ける中で知識や能力を増やしていく場面に合います。

単に「その仕事をしたことがある」という意味ではなく、

「実際にやりながら能力や知識を増やしていく」

というニュアンスが含まれています。

勉強でも「経験を積む」は使える?

「経験を積む」は仕事だけの表現ではありません。

勉強や学習についても使えます。

たとえば、

「海外で勉強して、さまざまな経験を積みました。」

「研究活動を通して、発表の経験を積みました。」

「日本人と話す経験を積むことも、会話力を伸ばすために大切です。」

このような文なら自然です。

ただし、

「毎日日本語を勉強して、勉強の経験を積みます。」

という言い方は少し不自然です。

この場合は、

「毎日日本語を勉強して、力をつけます。」

「毎日練習を重ねます。」

などのほうが自然でしょう。

何でも「経験を積む」と言えるわけではありません。

実際に何かを行い、その体験が将来の能力や知識につながっていくときに使うと自然です。

「経験を積む」と「経験する」は何が違う?

ここが学習者にとって特に重要なポイントです。

「経験する」も正しい日本語です。

ただし、「経験を積む」とは見ているところが違います。

経験する

「経験する」は、ある出来事や状況を実際に体験することに注目します。

たとえば、

「去年、大きな地震を経験しました。」

「留学中に、文化の違いを経験しました。」

「初めて一人暮らしを経験しました。」

これらは「その出来事を実際に体験した」という意味です。

経験が何回も重なって能力が高くなったかどうかは、重要ではありません。

経験を積む

一方、「経験を積む」は、経験が増えていく過程に注目します。

「営業の仕事をしながら経験を積んでいます。」

「いろいろな国で働き、国際的な経験を積みました。」

「まず簡単な仕事から始めて、少しずつ経験を積みましょう。」

一度の出来事ではなく、時間をかけて経験を増やしていくイメージです。

ですから、

「昨日、大きな地震の経験を積みました。」

とは普通言いません。

一回の出来事を表したいなら、

「昨日、大きな地震を経験しました。」

が自然です。

「経験がある」とも違う

もう一つよく使われるのが、

「経験がある」

です。

これは、過去に何かをしたことがあるという状態を表します。

たとえば、

「日本で働いた経験があります。」

「通訳をした経験があります。」

「海外生活の経験があります。」

ここでは、経験を増やしている途中ではありません。

すでに持っている経験について説明しています。

比べてみましょう。

「私はホテルで働いた経験があります。」

これは、「過去にホテルで働いたことがある」という意味です。

「私はホテルで働きながら、接客の経験を積んでいます。」

こちらは、「現在、仕事をしながら経験を増やしている」という意味です。

同じ「経験」でも、動詞によって見え方が変わります。

「経験を得る」は使える?

「経験を得る」という表現もあります。

たとえば、

「インターンシップを通して貴重な経験を得ました。」

という文は自然です。

ただし、日常的な仕事の成長について話す場合は、

「経験を積む」

のほうがよく使われます。

「経験を得る」は、何かの機会によって価値のある経験を手に入れた、という感じが強くなります。

たとえば、

「海外研修で貴重な経験を得た。」

なら自然です。

一方、

「この会社で10年間経験を得ました。」

より、

「この会社で10年間経験を積みました。」

のほうが自然です。

長い期間をかけて少しずつ増やしてきたことを言いたいからです。

こんな場面では「経験を積む」が自然

仕事の場面を見てみましょう。

「新人のうちは、さまざまな仕事を担当して経験を積むことが大切です。」

ここでは、いろいろな仕事をしながら能力を高めていく意味なので、「経験を積む」がぴったりです。

学校や勉強では、

「大学では、授業だけでなく実習でも経験を積むことができます。」

と言えます。

実習では、知識を覚えるだけでなく、実際に行動しながら学ぶからです。

日常生活では、

「若いうちにいろいろな経験を積んだほうがいい。」

という言い方もよくします。

特定の技術だけでなく、さまざまな体験を重ねて成長するという意味です。

不自然な文と自然な文を比べてみよう

次の文を比べてください。

不自然:
「この会社で5年間、営業の経験をしました。」

自然:
「この会社で5年間、営業の経験を積みました。」

5年間という長い期間の中で、営業の知識や能力を増やしたことを表すため、「積む」が自然です。

次はどうでしょうか。

不自然:
「去年、初めて海外旅行の経験を積みました。」

自然:
「去年、初めて海外旅行を経験しました。」

「初めて」の一回の体験なので、「経験する」のほうが自然です。

では、こちらはどうでしょう。

自然:
「海外旅行を何度もして、さまざまな経験を積みました。」

今回は一回ではありません。

何度も旅行し、その中でいろいろな経験が重なっているので、「経験を積む」が自然になります。

仕事で覚えておきたい例文

「若いうちは、いろいろな仕事をして経験を積んだほうがいい。」

「この会社で営業の経験を積みたいと思っています。」

「彼は海外支社で5年間、管理職としての経験を積みました。」

「経験を積めば、一人でも仕事ができるようになります。」

「新人には、まず現場で経験を積んでもらいます。」

就職活動や面接でも使いやすい表現です。

たとえば、

「将来は海外で働きたいので、まず日本で実務経験を積みたいです。」

のように使えます。

学校・勉強で覚えておきたい例文

「実習を通して、実際に教える経験を積むことができました。」

「大学では研究だけでなく、発表の経験も積みました。」

「日本語を上達させるには、実際に人と話す経験を積むことが大切です。」

「アルバイトをしながら、日本語で接客する経験を積みました。」

勉強では、単に本を読むだけでなく、実際に何かをする場面と「経験を積む」が相性のよい表現です。

「経験を積む」は将来につながる表現

「経験を積む」には、もう一つ大切なニュアンスがあります。

それは、

「今の経験が将来に役立つ」

という感覚です。

たとえば、

「今は給料よりも、経験を積むことを重視しています。」

と言えば、

「今の仕事を通して能力を高め、それを将来に生かしたい」

という意味が感じられます。

そのため、仕事、就職、転職、研修、留学、実習などの話で非常によく使われます。

「経験」はただ過去に起きたことではなく、自分の中に少しずつ蓄積されるものとして考えられているのです。

JLPTならどこで迷いやすい?

JLPTでは、「積む」の意味を直接聞く問題だけでなく、自然な組み合わせを選ばせる問題に注意が必要です。

たとえば、次のような問題です。

「将来、自分の店を開くために、まずレストランで経験を(   )つもりです。」

  1. 作る
  2. 積む
  3. 建てる
  4. 置く

答えは「積む」です。

「作る」でも意味を想像できそうですが、日本語では「経験を積む」という組み合わせを使います。

別の例も見てみましょう。

「大学を卒業したあと、海外で働き、さまざまな経験を(   )。」

  1. 積んだ
  2. 並べた
  3. 集めた
  4. 重なった

自然なのは「積んだ」です。

JLPTでは、一つ一つの単語の意味を知っているだけでは解けない問題があります。

「意味が通じそうか」ではなく、

「日本語では普通、どの単語とどの単語を組み合わせるのか」

を見ることが大切です。

「積む」が出たら物だけとは限らない

「積む」と聞くと、

「荷物を積む」
「本を積む」

のような物を想像する人も多いでしょう。

しかし、日本語では目に見えないものにも使います。

たとえば、

「経験を積む」
「実績を積む」
「修行を積む」

などです。

共通しているのは、

「少しずつ重ねて増やしていく」

というイメージです。

このイメージを持っていれば、「経験を積む」を丸暗記するだけでなく、ほかの表現も理解しやすくなります。

今日覚えるポイント

  • 「経験を積む」は、経験を少しずつ増やしていくときに使う。
  • 一回の出来事なら「経験する」が自然なことが多い。
  • 過去にしたことがあると言うなら「経験がある」を使う。
  • 「経験+積む」は、仕事や勉強でよく使う組み合わせとしてセットで覚える。

単語の意味を知っていても、本番の問題で「積む」「する」「得る」が並ぶと迷うことがあります。

そんなときに必要なのは、説明を読むだけではなく、実際に選択肢を見て「どれが一番自然か」を判断する練習です。

RJT(Rapid Japanese Training)では、JLPTで必要になる語彙や文法を、問題を解きながら確認できます。

理解する。
問題で試す。
間違えたところを確認する。

この繰り返しによって、「知っている日本語」を「選べる日本語」に変えていきましょう。

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