導入
「あとで先生と連絡します。」
この文を見て、「どこがおかしいの?」と思った人もいるかもしれません。
意味は十分に伝わります。しかし、「先生に何かを知らせる」という意味なら、
「あとで先生に連絡します。」
のほうが自然です。
一方、
「旅行中も家族と連絡を取っています。」
という文では、「連絡する」より「連絡を取る」のほうが状況に合っています。
「連絡する」と「連絡を取る」は、どちらも誰かとコミュニケーションすることを表します。そのため、日本語学習者にとっては非常に区別しにくい表現です。
しかし、この2つには少し違った感覚があります。
大まかに言えば、
- 連絡する:相手に知らせる、メッセージを送るという行為に注目する
- 連絡を取る:相手との間で連絡ができる状態を作る、やり取りすることに注目する
という違いがあります。
意味が近いからこそ、どちらを使っても意味が通じる場合があります。しかし、場面によっては少し不自然に聞こえることがあります。
この記事では、よくある間違いから、「連絡する」と「連絡を取る」の自然な使い分けを見ていきましょう。
よくある間違い
まず、次の文を見てください。
遅刻しそうだったので、会社と連絡を取りました。
この文は完全な間違いではありません。
実際に会社の人と電話などでやり取りをしたのであれば、「会社と連絡を取りました」と言うこともできます。
しかし、単に「遅刻することを会社に知らせた」という意味なら、
遅刻しそうだったので、会社に連絡しました。
のほうが自然です。
もう一つ見てみましょう。
日本にいる間も、家族に毎日連絡を取っています。
これも意味は分かりますが、「連絡を取る」を使うなら、
日本にいる間も、家族と毎日連絡を取っています。
のほうが自然です。
ここには、「に」と「と」の違いも関係しています。
なぜ不自然に聞こえるのか
「連絡する」と「連絡を取る」は、同じような場面で使われることがあります。
それでも、文の中で注目しているポイントが少し違います。
「連絡する」は、「誰かに電話する」「メールを送る」「情報を知らせる」といった、連絡という行為そのものに注目しやすい表現です。
そのため、
先生に連絡する
会社に連絡する
家族に連絡する
のように、「誰に連絡するのか」を「に」で表すことが多くあります。
一方、「連絡を取る」は、相手との間でコミュニケーションを成立させることや、その状態を続けることに注目する表現です。
そのため、
先生と連絡を取る
会社と連絡を取る
家族と連絡を取る
のように、「誰と連絡を取るのか」を「と」で表す形がよく使われます。
つまり、
Aに連絡する
では、Aに対して自分から連絡する感覚が強く、
Aと連絡を取る
では、Aとの間に連絡関係を作る、またはやり取りする感覚が強くなります。
この違いが分からないまま単語だけを置き換えると、意味は伝わっても少し不自然な文になることがあります。
自然な言い方
先ほどの例を直してみましょう。
遅刻することを知らせる場合
少し不自然になりやすい表現:
遅刻しそうだったので、会社と連絡を取りました。
自然な表現:
遅刻しそうだったので、会社に連絡しました。
ここでは、「遅刻する」という情報を会社に伝えることが目的です。
相手との継続的なやり取りよりも、「会社に知らせる」という一回の行為が中心なので、「連絡しました」が自然です。
家族とのやり取りを続けている場合
少し不自然になりやすい表現:
日本にいる間も、家族に毎日連絡を取っています。
自然な表現:
日本にいる間も、家族と毎日連絡を取っています。
ここでは、自分から一度知らせるだけではありません。
電話をしたり、メッセージを送ったり、返事をもらったりしながら、家族とのコミュニケーションを続けています。
そのため、「家族と連絡を取る」が自然です。
2つの語の基本的な違い
「連絡する」は、誰かに情報を伝えたり、電話やメールなどを送ったりする行為を広く表します。
例えば、
詳しい時間はあとで連絡します。
と言えば、「あとで時間を知らせます」という意味になります。
一方、「連絡を取る」は、相手との間で連絡を成立させることや、コミュニケーションを続けることを表す場合によく使われます。
例えば、
卒業後も高校時代の友達と連絡を取っています。
と言えば、一回だけメッセージを送ったのではなく、今でも友達とのつながりがあり、ときどき連絡し合っているという意味になります。
また、
担当者と連絡を取って確認します。
という文なら、担当者に一方的に情報を送るのではなく、担当者とやり取りして必要なことを確認する、という意味になります。
覚えるときは、
「知らせる・電話する・メッセージを送る」
→ 連絡する
「相手とつながる・やり取りする・連絡関係を保つ」
→ 連絡を取る
というイメージを持っておくと分かりやすいでしょう。
ただし、実際の日本語では使える場面が重なることもあります。
大切なのは、「絶対にどちらか一方しか使えない」と考えるのではなく、その文で何を表したいのかを見ることです。
例文で感覚をつかむ
例文1
電車が遅れているので、会社に連絡します。
この場合は「連絡する」が自然です。
会社に「遅れます」と知らせる行為が中心だからです。
例文2
詳しい日程が決まったら、こちらから連絡します。
これも「連絡する」が自然です。
日程が決まったあと、相手に情報を知らせるという意味です。
例文3
問題があったら、すぐに警察に連絡してください。
この場合も「連絡する」です。
警察に電話などで知らせる行為を表しています。
例文4
旅行中も家族と連絡を取っていました。
ここでは「連絡を取る」が自然です。
旅行中、家族との間で電話やメッセージなどのやり取りを続けていた、という意味だからです。
例文5
最近、大学時代の友達とはあまり連絡を取っていません。
この文では、友達との連絡関係が最近少なくなっていることを表しています。
単に一回連絡をしなかったという話ではありません。
「友達とのつながり・やり取り」という意味があるので、「連絡を取る」がよく合います。
例文6
まず担当者と連絡を取って、詳しい状況を確認してください。
ここでは、担当者に一方的に知らせるだけではありません。
担当者と話したり、メールをやり取りしたりして、必要な情報を確認することが目的です。
そのため、「担当者と連絡を取る」が自然です。
例文7
担当者に連絡して、詳しい状況を確認してください。
この文も自然です。
先ほどの例と比べると、「まず担当者に電話やメールをする」という行為に注目しています。
つまり、
担当者に連絡する
も、
担当者と連絡を取る
も使えます。
ただし、話し手がどこに注目しているかが少し違います。
このように、似た意味の言葉では「正しい・間違い」だけで判断できない場合があります。
「に」と「と」にも注意しよう
この2つの表現を覚えるときは、助詞も一緒に覚えると便利です。
よく使われる形は、
- 人に連絡する
- 人と連絡を取る
です。
例えば、
先生に連絡します。
は、「自分から先生に電話やメールをする」というイメージです。
一方、
先生と連絡を取ります。
は、「先生との間で連絡できるようにする」「先生とやり取りする」というイメージです。
もちろん、実際の日本語ではさまざまな文型がありますが、N3〜N2レベルでは、まずこの基本形を覚えておくと多くの場面で役に立ちます。
JLPTで間違えやすい選択肢
「連絡する」と「連絡を取る」のような表現は、JLPTの問題でも注意が必要です。
意味だけを見ると、どちらも「contact」に近いため、選択肢だけを見て判断すると迷いやすくなります。
例えば、次のような文を考えてみましょう。
電車が止まって会社に遅れそうなので、すぐ会社に( )。
選択肢に、
- 連絡する
- 連絡を取る
があった場合、意味だけを見ると両方選びたくなるかもしれません。
しかし、この文では「遅れることを会社に知らせる」という具体的な行為が中心です。
そのため、
すぐ会社に連絡する。
が自然です。
一方、
海外に住んでいる兄とは、今でも定期的に( )。
という文なら、
連絡を取っている。
が非常に自然です。
ここでは一回の連絡ではなく、兄とのコミュニケーションを現在も続けているからです。
JLPTでは、単語だけを見るのではなく、
「誰に何かを知らせるのか」
「誰かとのやり取りを続けているのか」
「一回の行為なのか、関係や交流を表しているのか」
という文脈を見ることが大切です。
「意味が似ているから、どちらでもよさそう」と感じたときほど、前後の文をよく確認してみてください。
正解に近い誤答は、意味がまったく違う言葉ではありません。
意味は近いけれど、その場面には少し合わない言葉が選択肢に入っていることがあります。
まとめ
「連絡する」と「連絡を取る」は、どちらも人とのコミュニケーションを表すため、非常に混同しやすい表現です。
基本的には、
- 相手に知らせる、電話やメールをする → 連絡する
- 相手との間でやり取りする、連絡関係を作る・保つ → 連絡を取る
- 「人に連絡する」と「人と連絡を取る」の助詞の違いにも注目する
と覚えると分かりやすくなります。
ただし、実際には両方使える場面もあります。
そのときは、「どちらが文法的に正しいか」だけではなく、「話し手が連絡という行為に注目しているのか、それとも相手とのやり取りや関係に注目しているのか」を考えてみましょう。
JLPTの語彙や読解では、このような「意味は近いけれど、文脈によって自然さが違う表現」を見分ける力が重要です。
RJT(Rapid Japanese Training)では、語彙・文法・読解・聴解の問題を通して、単語の意味を覚えるだけでなく、実際の文脈の中で自然な日本語を選ぶ練習ができます。
似た選択肢で迷うことが多い人は、問題を解きながら「なぜこちらが自然なのか」を確認してみてください。