「風邪になる」と「風邪をひく」、どちらが自然?
次の二つの文を見てください。
- 昨日から風邪になりました。
- 昨日から風邪をひきました。
どちらも意味は想像できます。しかし、日本語として自然なのは「風邪をひきました」です。
では、こちらはどうでしょうか。
- 朝から熱になりました。
- 朝から熱が出ました。
自然なのは「熱が出ました」です。
「風邪」「熱」という単語の意味を知っていても、動詞の選び方を間違えると、日本語らしくない文になってしまいます。
体調について話すとき、日本語では「名詞の意味」だけではなく、「どの言葉とどの動詞を組み合わせるか」がとても重要です。
なぜ「風邪になる」と言いたくなるの?
外国語を勉強していると、知っている単語を一つずつ組み合わせて文を作りたくなります。
例えば、
- 病気になる
- 元気になる
- 医者になる
という表現を知っていると、
「病気になる」が自然なのだから、「風邪になる」も使えそうだ
と考えてしまうかもしれません。
しかし、日本語では同じような意味の名詞でも、いつも同じ動詞を使うわけではありません。
「病気」なら、
- 病気になる
と言えますが、「風邪」なら普通は、
- 風邪をひく
と言います。
これは単語を一つずつ理解するだけでは覚えにくい部分です。
そこで、「風邪」と「ひく」を別々に覚えるのではなく、
風邪をひく
という一つのセットとして覚えるのがおすすめです。
このような、よく一緒に使われる自然な言葉の組み合わせをコロケーションといいます。
「風邪をひく」はセットで覚えよう
「ひく」にはいろいろな意味があります。
例えば、
- ドアを引く
- 線を引く
- 辞書を引く
- 風邪をひく
があります。
「ドアを引く」の「引く」と「風邪をひく」の「ひく」では、意味のイメージがかなり違います。
そのため、
「なぜ風邪を引っ張るの?」
と考えるより、
風邪 + ひく
という日本語の決まった組み合わせとして覚えたほうが実用的です。
自然な例
- 昨日、風邪をひきました。
- 寒い日に外にいたので、風邪をひいてしまいました。
- 風邪をひかないように、暖かくしてください。
- 彼は風邪をひいて、学校を休みました。
一方、次のような表現は普通は使いません。
- 不自然:風邪をする
- 不自然:風邪になる
「病気になる」は自然でも、「風邪」は「ひく」と組み合わせる、と覚えておきましょう。
「熱」はなぜ「出る」?
次に「熱」を見てみましょう。
体調が悪くなって体温が高くなったとき、日本語では、
熱が出る
と言います。
例えば、
- 夜になって熱が出ました。
- 風邪をひいて、38度の熱が出ました。
- 朝から熱が出ているので、今日は休みます。
という使い方です。
ここで大切なのは、「熱になる」ではなく「熱が出る」ということです。
日本語の「出る」は、体の症状についてよく使われます。
例えば、
- 熱が出る
- 咳が出る
- 鼻水が出る
- 症状が出る
です。
つまり、「出る」には「体の中の状態や症状が表面に現れる」という使い方があります。
この感覚を知っていると、「熱が出る」だけでなく、「咳が出る」「症状が出る」も覚えやすくなります。
「熱が出る」と「熱を出す」は何が違う?
ここで少し迷いやすい表現があります。
- 熱が出る
- 熱を出す
実は、どちらも使われます。
ただし、使い方が少し違います。
熱が出る
体温が上がったという状態を、そのまま説明するときによく使います。
- 昨日の夜から熱が出ています。
- 風邪をひくと、よく熱が出ます。
- 急に熱が出たので、病院へ行きました。
自分の体調について話すときにも、とても自然です。
熱を出す
人を主語にして、「その人に発熱という症状が起きた」と表現するときに使われます。
特に、子どもについて話すときによく聞きます。
- 子どもが急に熱を出しました。
- 息子が熱を出したので、会社を休みました。
- 旅行の前日に娘が熱を出してしまいました。
「熱を出す」は、「本人が意識して熱を出した」という意味ではありません。
ここが「出す」という動詞から想像しにくいところです。
日常的に自分の体調を説明するなら、
熱が出ました。
と覚えておけば使いやすいでしょう。
体調表現は「名詞+動詞」で覚える
体調に関する日本語には、決まった組み合わせがたくさんあります。
例えば、
- 風邪をひく
- 熱が出る
- 咳が出る
- 鼻水が出る
- 頭が痛い
- のどが痛い
- 体調を崩す
- 病気になる
- 病気にかかる
- 熱が下がる
- 風邪が治る
です。
一つ一つの単語だけを覚えると、実際に話すときに、
「風邪は『なる』かな?『する』かな?」
「熱は『なる』かな?『出る』かな?」
と迷ってしまいます。
そこで、
風邪をひく
熱が出る
熱が下がる
風邪が治る
というように、一つのまとまりとして覚えてください。
これはJLPTの語彙問題にも役立つ覚え方です。
「病気になる」「病気にかかる」との違いも確認しよう
「風邪をひく」と似た体調表現に、
- 病気になる
- 病気にかかる
があります。
「病気になる」は、とても一般的な表現です。
- 父が病気になりました。
- 病気にならないように、健康に気をつけています。
「病気にかかる」は、特定の病気に感染したり、病気を発症したりしたことを表すときによく使われます。
- インフルエンザにかかりました。
- 感染症にかからないように注意してください。
一方、「風邪」は日常会話では、
- 風邪をひく
が最も基本的な表現です。
つまり、すべての体調表現に同じ動詞を当てはめることはできません。
「病気なら『なる』だから、風邪も『なる』」とは考えず、それぞれの自然な組み合わせを覚えることが大切です。
例文で自然な感覚を確認しよう
日常生活
- 昨日から風邪をひいています。
- 朝起きたら、少し熱が出ていました。
- 熱は下がりましたが、まだ咳が出ます。
学校
- 田中さんは風邪をひいたので、今日は学校を休みました。
- 昨日の夜に熱が出ましたが、今朝はもう下がりました。
- 最近、クラスで風邪をひいている人が増えています。
仕事
- 風邪をひいてしまったので、今日は在宅で仕事をします。
- 昨夜から熱が出ているため、午前中に病院へ行きます。
- 体調を崩さないように、忙しいときこそ十分に休んでください。
家族
- 子どもが急に熱を出したので、病院に連れて行きました。
- 妻は風邪をひいて、昨日から寝ています。
- 熱が下がったからといって、すぐに無理をしないほうがいいですよ。
不自然な日本語を直してみよう
次の文は、意味は想像できますが、日本語としては不自然です。
-
不自然:昨日、風邪になりました。
-
自然:昨日、風邪をひきました。
-
不自然:朝から熱になりました。
-
自然:朝から熱が出ました。
-
不自然:風邪が出たので学校を休みました。
-
自然:風邪をひいたので学校を休みました。
-
不自然:熱をひきました。
-
自然:熱が出ました。
「風邪」と「熱」はどちらも体調に関係しますが、使う動詞は違います。
ここをセットで覚えることが重要です。
JLPTではどう問われる?
JLPTでは、単語そのものの意味を知っているだけでは答えにくい問題があります。
例えば、次の問題を考えてみてください。
問題1
昨日から風邪を( )ので、今日は家で休みます。
- 出した
- なった
- ひいた
- 作った
最も自然なのは「ひいた」です。
「風邪」という名詞を見たら、「ひく」という組み合わせを思い出せるかどうかがポイントです。
問題2
朝から熱が( )ので、病院へ行きました。
- 出た
- ひいた
- なった
- 作った
自然なのは「出た」です。
「熱」は「出る」と組み合わせます。
問題3
昨日は38度ありましたが、今朝は熱が( )。
- 治りました
- 下がりました
- ひきました
- 終わりました
自然なのは「下がりました」です。
「風邪」は「治る」、「熱」は「下がる」と覚えておくと判断しやすくなります。
JLPTで重要なのは、
意味がなんとなく通じるか
ではありません。
日本語として最も自然な組み合わせになっているか
を見ることです。
選択肢の動詞を一つずつ日本語に訳して考えるより、「この名詞なら、いつもどの動詞と一緒に使うか」を思い出すほうが、正解を選びやすくなります。
今日覚えるポイント
- 「風邪」は「風邪をひく」とセットで覚える
- 「熱」は基本的に「熱が出る」と覚える
- 症状には「咳が出る」「鼻水が出る」のように「出る」を使うことが多い
- 単語だけでなく「名詞+動詞」の組み合わせで覚えると、JLPTでも迷いにくい
理解したら、次は問題で判断してみよう
「風邪をひく」「熱が出る」と聞けば、説明を読んだ直後なら簡単に感じるかもしれません。
しかし、JLPTでは複数の似た選択肢が並びます。
そのときに必要なのは、「知っている」ことだけではなく、「短時間で自然な日本語を選べる」ことです。
RJT(Rapid Japanese Training)では、語彙・文法・読解・聴解の問題を通して、
理解する → 問題で試す → 間違いを確認する
という流れで、日本語の判断力を練習できます。
今日覚えた「風邪をひく」「熱が出る」のようなコロケーションも、実際の問題の中で何度も判断することで、少しずつ自然に選べるようになります。
日本語の「分かる」を「選べる」に変えていきましょう。