導入
「ドアを閉める」と「ドアが閉まる」。
どちらも「開いていたものが閉じる」という場面で使うので、日本語学習者にとってはとても間違えやすい表現です。
たとえば、次の2つの文を見てみましょう。
「寒いから、窓を閉めてください。」
「この窓は自動で閉まります。」
どちらも窓について話していますが、「閉める」と「閉まる」では、話しているポイントが違います。
「閉める」は、人が何かを閉じる行動に注目するときに使います。
一方、「閉まる」は、ドアや窓などが閉じる変化や、閉じた状態に注目するときに使います。
この違いは、単語の意味だけを覚えても、なかなか身につきません。
「誰が何をするのか」
「何がどうなるのか」
という場面をイメージしながら覚えることが大切です。
まず場面で考えてみよう
冬の寒い日に、教室の窓が開いているとします。
先生が学生に言います。
「寒いですね。窓を閉めてください。」
この場合は「閉める」が自然です。
先生は、学生に「窓を閉じるという行動」をお願いしているからです。
では、電車のドアならどうでしょうか。
駅でアナウンスが流れます。
「ドアが閉まります。ご注意ください。」
ここでは「閉まる」を使います。
誰かにドアを閉じるよう頼んでいるのではなく、「これからドアが閉じる」という変化を伝えているからです。
つまり、まず次のように考えると分かりやすいでしょう。
- 人が何かを閉じる → 閉める
- 何かが閉じる、閉じた状態になる → 閉まる
この視点を持つだけで、多くの場面で使い分けやすくなります。
場面1:日常会話で使うなら
日常会話では、「閉める」も「閉まる」も非常によく使います。
どちらのほうが会話的という違いではなく、「人の行動を話しているか」「物の変化を話しているか」で選びます。
たとえば、部屋が寒くなってきたときには、こんな会話が自然です。
A:「ちょっと寒くない?」
B:「うん。窓、閉めようか。」
A:「お願い。」
ここでは、Bさんが窓を閉じるので「閉める」を使います。
一方、自動ドアについて話す場合はどうでしょうか。
A:「このドア、ずっと開いているね。」
B:「大丈夫。少し待てば自動で閉まるよ。」
この場合は、ドアそのものが閉じることに注目しているため「閉まる」が自然です。
お店についても同じです。
「今日は店を早く閉めます。」
と言えば、店の人が営業を終えるという行動を表します。
「この店は夜9時に閉まります。」
と言えば、その店の営業時間が夜9時までだという客観的な情報になります。
会話では、「誰がするのか」と「何がどうなるのか」を意識すると、自然な表現を選びやすくなります。
場面2:文章やニュースで使うなら
文章やニュースでも、「閉める」と「閉まる」の基本的な違いは同じです。
「閉める」は人や組織の行動に焦点があり、「閉まる」は物や施設の状態の変化に焦点があります。
たとえば、次の文を比べてみましょう。
「大雪のため、店主は午後5時に店を閉めた。」
この文では、「店主」という人が店の営業を終える行動をしています。
一方、
「大雪のため、店は午後5時に閉まった。」
と言うと、店が営業終了の状態になったことを客観的に説明しています。
ニュースや説明文では、この違いが重要になることがあります。
たとえば、
「強風のため、係員が門を閉めた。」
なら、係員の判断や行動がポイントです。
「午後6時になると、門が自動的に閉まる。」
なら、門の仕組みや変化がポイントです。
JLPTの読解問題でも、こうした「行動」と「状態・変化」の違いを読み取ることがあります。
単に「閉じる」という意味だけで考えず、文の主語と助詞を見ることが大切です。
特に、
「人が+物を+閉める」
「物が+閉まる」
という形に注目すると判断しやすくなります。
場面3:感情や評価が入るなら
「閉める」と「閉まる」そのものに、強い感情の違いがあるわけではありません。
ただし、「閉める」は人の意志や判断を表しやすいため、その人の気持ちや決定と結びつくことがあります。
たとえば、
「もう遅いから、今日は店を閉めよう。」
という文には、「今日はもう営業を終わろう」という話し手の判断があります。
一方、
「この店はもう閉まっている。」
という文は、現在の店の状態を客観的に説明しています。
また、
「彼は怒って、強くドアを閉めた。」
と言えば、「彼」が意図的にドアを閉じた行動が描かれています。
「風で突然ドアが閉まった。」
と言えば、人の感情や意志ではなく、ドアに起きた変化を説明しています。
そのため、文章を読むときには、
「誰かの意志や行動が重要なのか」
「起きた変化や現在の状態が重要なのか」
を考えてみると、2つの違いが分かりやすくなります。
2つの語の違いを整理
「閉める」と「閉まる」は、次のように整理できます。
- 「閉める」は、人がドアや窓などを閉じる行動を表す
- 「閉まる」は、ドアや窓などが閉じる変化を表す
- 「閉める」では、「誰が閉じたか」が重要になりやすい
- 「閉まる」では、「何が閉じたか」「どんな状態になったか」が重要になりやすい
- 「ドアを閉める」のように、「閉める」では「を」を使うことが多い
- 「ドアが閉まる」のように、「閉まる」では「が」を使うことが多い
- 「店を閉める」は、店の人が営業を終えることを表す
- 「店が閉まる」は、店が営業終了の状態になることを表す
「閉める」と「閉まる」は、かたい表現とやわらかい表現の違いではありません。
会話でも文章でも両方使われます。
大切なのは、「人の行動」なのか「物や場所の変化・状態」なのかという違いです。
例文で確認
例文1
「寒いので、窓を閉めてください。」
人に窓を閉じる行動をお願いしています。
家庭、学校、会社などの日常会話でよく使う自然な表現です。
例文2
「ボタンを押すと、窓が自動で閉まります。」
窓が自動的に閉じる仕組みについて説明しています。
機械や設備の説明でよく使われる表現です。
例文3
「出かける前に、全部のドアを閉めました。」
話し手が自分でドアを閉じたことを表しています。
「自分が何をしたか」を説明する場面なので「閉める」が自然です。
例文4
「電車のドアが閉まります。ご注意ください。」
ドアがこれから閉じることを知らせています。
駅や電車でよく聞く表現です。
例文5
「この店は午後8時に閉まります。」
店の営業時間について説明しています。
店員が何をするかではなく、「店が何時に営業終了になるか」という情報が中心です。
例文6
「今日はお客さんが少ないので、店を早く閉めることにしました。」
店を経営する人が、営業を終了することを決めた場面です。
人の判断や意志が含まれているため、「閉める」が自然です。
例文7
「図書館に着いたときには、もう入り口が閉まっていました。」
図書館に着いたときの入り口の状態を説明しています。
誰が閉じたのかは重要ではありません。
例文8
「風が強くて、ドアが急に閉まった。」
風によってドアが閉じる変化が起きた場面です。
人が意図的に閉じたわけではないので、「閉まる」が自然です。
例文9
「会議が始まるので、ドアを閉めてもらえますか。」
相手にドアを閉じる行動をお願いしています。
学校や仕事の場面でもよく使えます。
例文10
「この時間になると、正門はすでに閉まっている。」
正門の現在の状態を説明しています。
説明文や読解文でもよく見かける形です。
JLPT読解での見方
JLPTの読解問題で「閉める」や「閉まる」が出てきたら、単語だけを見るのではなく、前後の文を確認しましょう。
特に重要なのは、「誰が何をしたのか」と「何がどうなったのか」です。
たとえば、
「係員は安全を確認してから門を閉めた。」
という文なら、係員の行動が重要です。
「午後6時になると門が閉まる。」
という文なら、門が閉じる時間や仕組みが重要です。
また、
「店を閉める」
と
「店が閉まる」
では、文章全体の視点も少し変わります。
「経営者は売り上げが減ったため、店を閉めることにした。」
なら、経営者の決断について説明しています。
「駅前の店は去年閉まった。」
なら、その店が営業を終了したという出来事を説明しています。
読解問題では、こうした主語、助詞、前後の原因や結果を確認してください。
「閉める=人の行動」
「閉まる=物や場所の変化・状態」
という基本を持ちながら文脈を読むと、意味を取りやすくなります。
まとめ
「閉める」と「閉まる」は、どちらも「開いていたものが閉じる」場面で使いますが、文の視点が違います。
- 人が何かを閉じるなら「閉める」
- 何かが閉じるなら「閉まる」
- 「窓を閉める」は人の行動
- 「窓が閉まる」は窓の変化
- 「店を閉める」は人や会社の判断・行動
- 「店が閉まる」は店が営業終了の状態になること
日本語の似た言葉を正しく使うためには、辞書の意味だけではなく、「実際にどんな場面で使われるか」を意識することが大切です。
RJT(Rapid Japanese Training)では、JLPT対策の問題を解きながら、語彙や文法を実際の文脈の中で確認できます。
「意味は知っているけれど、問題になると迷ってしまう」という人は、実際に問題を解きながら使い分ける力を身につけてみてください。