「責任を持つ」と「責任を負う」は同じ?
次の二つの文を見てください。
私はこの仕事に責任を持ちます。
私はこの仕事の結果について責任を負います。
どちらも自然な日本語です。
では、「責任を持つ」と「責任を負う」は、同じ意味なのでしょうか。
もう一つ考えてみましょう。
店長は事故の責任を持った。
店長は事故の責任を負った。
この場合は、「責任を負った」のほうが自然に感じられます。
反対に、
責任を持って、この仕事をしてください。
という文を、
責任を負って、この仕事をしてください。
とすると、少し意味が変わってしまいます。
「責任を持つ」と「責任を負う」は、どちらも「責任」という言葉を使いますが、注目しているポイントが違うのです。
この違いを理解すると、ニュース、仕事の会話、JLPTの読解問題などで、どちらを選ぶべきか判断しやすくなります。
なぜ「持つ」と「負う」で迷ってしまうのか
「持つ」は、初級レベルからよく使う動詞です。
かばんを持つ。
お金を持つ。
興味を持つ。
自信を持つ。
このため、「責任」についても「持つ」を使えばよい、と考えやすいでしょう。
一方、「負う」は日常会話では「持つ」ほど頻繁に使いません。
しかし、日本語では、
- 責任を負う
- 義務を負う
- 借金を負う
- 傷を負う
のような組み合わせがあります。
「負う」には、何かを自分が引き受ける、自分の身に受ける、という感覚があります。
つまり、単に「責任」という単語の意味だけを知っていても、自然な日本語になるとは限りません。
日本語では、名詞と動詞の組み合わせをセットで覚えることが大切です。
「責任」と「負う」も、その代表的な組み合わせの一つです。
「責任を負う」は結果や義務を引き受ける
「責任を負う」は、問題や結果について、自分がその責任を引き受ける、という意味です。
例えば、会社で大きなミスが起きたとします。
部長は今回の失敗について責任を負うことになった。
この文では、部長が単に「責任を意識している」という意味ではありません。
失敗の結果に対して、部長が責任を引き受けるという意味です。
そのため、「責任を負う」は少し重い表現です。
仕事、法律、契約、事故、ニュースなどでよく使われます。
「負う」は背中に何かを背負うイメージ
「負う」という動詞には、本来「背負う」というイメージがあります。
責任を実際に背中に載せるわけではありませんが、
問題の結果を自分が引き受ける
という感覚があります。
そのため、
事故の責任を負う
損害について責任を負う
契約上の責任を負う
のような表現と相性がよいのです。
「責任+負う」という一つのまとまりで覚えておくと、文章の中でも判断しやすくなります。
「責任を持つ」は自覚や姿勢に注目する
では、「責任を持つ」はどうでしょうか。
「責任を持つ」は、自分の役割をきちんと理解し、最後までしっかり行うという姿勢を表すことが多い表現です。
例えば、
自分の仕事に責任を持ってください。
これは、
「問題が起きたら責任を取ってください」
という意味ではありません。
「自分の仕事だという意識を持ち、きちんと仕事をしてください」
という意味です。
つまり、
「責任を持つ」は仕事や行動に対する姿勢、
「責任を負う」は結果や義務の引き受け、
という違いがあります。
「責任を持つ」と「責任を負う」を場面で比べてみよう
例えば、学校の文化祭で、ある学生がクラスのイベントを担当することになったとします。
先生が、
最後まで責任を持って準備してください。
と言うのは自然です。
これは「担当者としてきちんと行動してください」という意味です。
一方、準備不足が原因で大きな問題が起こった場合、
この問題について誰が責任を負うのか話し合う必要があります。
という表現が使えます。
こちらは、問題の結果を誰が引き受けるかに注目しています。
もう一つ、会社の場面を見てみましょう。
このプロジェクトは私が責任を持って進めます。
これは、「私が中心になって、きちんと進めます」という意味です。
それに対して、
万一損害が発生した場合、会社が責任を負います。
では、損害という結果について会社が責任を引き受ける、という意味になります。
この違いが分かれば、二つの表現はかなり使い分けやすくなります。
「責任を取る」とは何が違う?
さらに似た表現として、「責任を取る」もあります。
「責任を取る」は、すでに問題や失敗が起きたあとで、その結果に対して何らかの行動をする場合によく使います。
例えば、
社長は業績悪化の責任を取って辞任した。
という文です。
ここでは、責任を認めたうえで「辞任する」という具体的な行動をしています。
整理すると、
- 責任を持つ:役割を自覚してきちんと行動する
- 責任を負う:結果や義務を引き受ける
- 責任を取る:問題のあとで責任に対応する行動をする
という違いがあります。
完全に別々の意味ではありませんが、使われる場面には違いがあります。
例文で使い方を確認しよう
仕事
この仕事は私が責任を持って担当します。
自分が担当者として、最後までしっかり仕事をするという意味です。
会社は商品の安全性について責任を負っています。
安全性に問題があった場合、その結果について会社に責任があるという意味です。
学校
グループのリーダーは、責任を持ってメンバーをまとめてください。
リーダーとして自覚を持って行動することが求められています。
生徒が起こした問題について、学校側にも一定の責任があると考えられている。
このような内容をさらに強く表現する場合には、
学校側も一定の責任を負う。
と言うことができます。
日常生活
ペットを飼うなら、最後まで責任を持って世話をしなければならない。
「飼い主としてきちんと世話をする」という姿勢を表しています。
他人に損害を与えた場合、その責任を負う必要がある。
こちらは、起きた結果に対する責任です。
ニュース
ニュースや新聞では、「責任を負う」がよく使われます。
事故が起きた場合、運営会社が責任を負う可能性があります。
経営者は会社の判断について最終的な責任を負います。
法律、事故、契約、経営などでは、「誰が結果を引き受けるのか」が重要になるためです。
こんな使い方には注意
次の文を見てください。
私は明日の会議を責任を負って準備します。
意味を想像することはできますが、普通はこのようには言いません。
自然なのは、
私は明日の会議を責任を持って準備します。
です。
まだ問題が起きているわけではなく、「きちんと準備する」という姿勢について話しているからです。
一方、
会議の中止によって発生した損害について、主催者が責任を負います。
なら自然です。
ここでは「損害」という結果について責任を引き受けています。
「責任」という言葉だけを見るのではなく、その前後に、
「仕事や役割について話しているのか」
それとも、
「問題や結果について話しているのか」
を見ることがポイントです。
JLPTならどう問われる?
JLPTでは、動詞一つ一つの意味だけではなく、自然な組み合わせを判断する問題が出ることがあります。
例えば、次の文を考えてみてください。
この仕事は私が最後まで責任を( )進めます。
- 負って
- 持って
- 積んで
- 満たして
最も自然なのは「持って」です。
「最後まできちんと仕事をする」という姿勢を表しているからです。
では、こちらはどうでしょうか。
商品によって事故が起きた場合、メーカーがその責任を( )ことになります。
- 持つ
- 負う
- 積む
- 作る
この場合は「負う」が自然です。
事故という結果について、誰が責任を引き受けるのかを話しているからです。
JLPTでは、
「意味がなんとなく通じるか」
だけで判断すると迷ってしまいます。
重要なのは、
日本語では、この名詞とどの動詞が自然に組み合わされるのか。
という視点です。
「責任+負う」「責任+持つ」のように、単語をセットで覚えていると、選択肢をかなり絞りやすくなります。
単語ではなく「組み合わせ」で覚えよう
日本語には、意味を一つずつ知っているだけでは使いにくい表現がたくさんあります。
例えば、
- 責任を負う
- 責任を持つ
- 経験を積む
- 条件を満たす
- 影響を与える
- 結論を出す
などです。
「負う=ある意味」「責任=ある意味」と別々に覚えるより、
責任を負う
というまとまりで覚えたほうが、実際の会話や文章ですぐに使えます。
読解問題でも、このような組み合わせを知っていると、文章を一語ずつ分析しなくても意味を素早く理解できるようになります。
今日覚えるポイント
- 「責任を持つ」は、役割を自覚してきちんと行動すること。
- 「責任を負う」は、問題の結果や義務を引き受けること。
- 「責任を取る」は、問題が起きたあとに責任に対応する行動をすること。
- 「責任+負う」のように、名詞と動詞をセットで覚えるとJLPTでも判断しやすい。
分かったつもりで終わらせないことが大切
「責任を持つ」と「責任を負う」の違いを読んで理解すると、その瞬間は簡単に感じるかもしれません。
しかし、実際のJLPTでは、似た意味の言葉が同じ選択肢に並びます。
そのとき必要なのは、
「説明を覚えていること」
だけではありません。
文章を見た瞬間に、
「この場面なら『持つ』だ」
「結果について話しているから『負う』だ」
と判断できる力です。
そのためには、
理解する → 問題で試す → 間違いを確認する
という練習を繰り返すことが効果的です。
RJT(Rapid Japanese Training)では、語彙・文法・読解・聴解の問題を通して、こうした「分かる」から「選べる」への練習ができます。
JLPTの選択肢を見ると、いつも二つくらいで迷ってしまうという人は、実際の問題を解きながら日本語の自然な組み合わせを確認してみてください。