導入
「決める」と「決まる」は、JLPT N3レベルでぜひ使い分けられるようにしておきたい動詞です。
どちらも「何かについて答えや方向が決定する」という意味に関係しているため、学習者にとっては非常によく似て見えます。
たとえば、
「旅行の日を決めました」
と
「旅行の日が決まりました」
は、どちらも旅行の日について話しています。
そのため、「どちらを使っても同じでは?」と思ってしまうかもしれません。
しかし、日本語では、
「誰かが決定する」のか
それとも、
「結果として決定した状態になる」のか
によって、使う動詞が変わります。
意味が近いからこそ、ここを間違えると、言いたいことは伝わっても少し不自然な日本語になってしまいます。
まずは、学習者が作りやすい間違いから見てみましょう。
よくある間違い
たとえば、次の文です。
「来週の会議の日を決まりました。」
何を言いたいのかは分かります。
「来週の会議の日程が決定した」という意味ですね。
しかし、「日を決まりました」という形は自然ではありません。
もう一つ見てみましょう。
「私は大学を卒業したら日本へ留学すると決まりました。」
これも意味はある程度伝わりますが、自分で「日本へ留学する」という選択をしたのであれば、「決まりました」ではなく「決めました」のほうが自然です。
なぜ、このような間違いが起こるのでしょうか。
なぜ不自然に聞こえるのか
ポイントは、「決定する人や意志」に注目するか、「決定した結果」に注目するかです。
「決める」は、誰かが考えたり選んだりして、答えを出すときに使います。
つまり、
「誰が決めたのか」
を意識しやすい動詞です。
一方、「決まる」は、物事の内容や予定などが確定したことを表します。
こちらでは、
「誰が決めたのか」
よりも、
「何が決定したのか」
に注目します。
そのため、助詞も変わります。
「会議の日を決める」
では、「会議の日」が決める対象なので「を」を使います。
一方、
「会議の日が決まる」
では、「会議の日」そのものが決定した状態になるので「が」を使います。
この「を」と「が」の違いは、「決める」と「決まる」を見分ける大きなヒントになります。
自然な言い方
先ほどの間違いを直してみましょう。
不自然:
「来週の会議の日を決まりました。」
自然:
「来週の会議の日を決めました。」
この場合は、話し手や関係者が会議の日を選んだ、という行為に注目しています。
別の言い方もできます。
「来週の会議の日が決まりました。」
こちらは「誰かが決めた」という行為よりも、「会議の日程が確定した」という結果を伝えています。
次の例も見てみましょう。
不自然:
「私は大学を卒業したら日本へ留学すると決まりました。」
自然:
「私は大学を卒業したら日本へ留学すると決めました。」
自分で将来について考えて選択したので、「決める」が自然です。
ただし、
「来年、日本へ留学することが決まりました。」
なら自然です。
この場合は、「留学する」という予定が正式に確定したことを表しています。
つまり、似た内容でも、話し手がどこに注目しているかによって「決める」と「決まる」が変わるのです。
2つの語の基本的な違い
ここで、「決める」と「決まる」の基本的な違いを整理しましょう。
決める
「決める」は、選択肢の中から一つを選んだり、考えたあとで方針を決定したりするときに使います。
基本の形は、
「人が何かを決める」
です。
たとえば、
「私は旅行の日を決めました。」
「みんなで店を決めましょう。」
「今年の目標を決めました。」
のように使います。
誰かの意志や判断によって答えを出すイメージです。
決まる
「決まる」は、予定・内容・ルール・結果などが確定したことを表します。
基本の形は、
「何かが決まる」
です。
たとえば、
「旅行の日が決まりました。」
「会議の場所が決まりました。」
「新しいルールが決まりました。」
のように使います。
誰が決定したかよりも、「決定した結果」に注目する表現です。
覚えるときは、
「人が何かを決める」
「何かが決まる」
という組み合わせで覚えると分かりやすいでしょう。
例文で感覚をつかむ
例文1
「今夜、何を食べるか決めましたか。」
これは、相手が自分で食べるものを選んだかどうかを聞いています。
選択する人がいるので、「決める」が自然です。
例文2
「今日の夕食はカレーに決まりました。」
この文では、「今日の夕食のメニューがカレーになった」という結果を表しています。
誰がカレーを選んだのかは重要ではありません。
そのため、「決まる」が自然です。
例文3
「旅行の日程は家族で相談して決めました。」
家族が話し合って日程を選んでいるので、「決める」を使います。
「相談して」という行動があることからも、人の判断や意志が中心になっていることが分かります。
例文4
「旅行の日程がやっと決まりました。」
ここでは、長く決まっていなかった旅行の日程が、ようやく確定したことを伝えています。
決定した結果に注目しているので、「決まる」です。
例文5
「私は毎朝30分、日本語を勉強すると決めています。」
自分で作ったルールや方針について話しています。
自分の意志で決定したことなので、「決める」を使います。
例文6
「来月から大阪支店で働くことが決まりました。」
会社などの正式な決定によって、来月から大阪支店で働くことが確定した、という意味です。
この文では、「私が自分で大阪支店を選んだ」という意味ではありません。
予定や人事が確定したことに注目しているため、「決まる」が自然です。
例文7
「次のリーダーを誰にするか、今日中に決めなければなりません。」
誰かが候補者の中から一人を選ぶ必要があります。
判断や選択を行うため、「決める」です。
例文8
「次のリーダーが田中さんに決まりました。」
選考などが終わって、田中さんがリーダーになることが確定した場面です。
結果を伝えているので、「決まる」が自然です。
このように、「決める」と「決まる」は同じ出来事について使えることがあります。
「会社が新しい社長を決めました。」
「新しい社長が決まりました。」
この2つは、ほぼ同じ出来事を別の視点から表しています。
前の文は「会社が決定した」という行為に注目し、後ろの文は「新しい社長が確定した」という結果に注目しています。
この視点の違いを理解すると、使い分けがかなり分かりやすくなります。
JLPTで間違えやすい選択肢
JLPTでは、「決める」と「決まる」のような自動詞・他動詞の組み合わせがよく問題になります。
特に注意したいのは、単語の意味だけを見ると、どちらも正しそうに感じることです。
たとえば、
「来月の試験の日が( )。」
という文があったとします。
選択肢に、
「決めました」
「決まりました」
があれば、「試験の日を決定した」という意味だけを考えて「決めました」を選びたくなるかもしれません。
しかし、文では、
「試験の日が」
となっています。
そのため、
「来月の試験の日が決まりました。」
が自然です。
反対に、
「先生が試験の日を( )。」
なら、
「先生が試験の日を決めました。」
となります。
JLPTでは、単語だけではなく、助詞を見ることが非常に重要です。
- 「人が+何かを+決める」
- 「何かが+決まる」
この形を覚えておけば、正解を選びやすくなります。
ただし、実際の日本語では、助詞だけで判断できない問題もあります。
たとえば、
「私は来年、日本へ行くことに( )。」
この場合は「決めました」が自然です。
話し手自身の意志で選択したからです。
一方、
「私は来年、日本へ行くことが( )。」
なら「決まりました」が自然です。
こちらは、自分の意志というより、予定が確定したことを表しています。
JLPTでは、このように「意味が近いから選びたくなる誤答」がよく使われます。
単語の日本語訳だけを覚えるのではなく、
「誰が決めるのか」
「何が決まるのか」
「人の意志を表しているのか」
「決定した結果を表しているのか」
という文全体の関係を見ることが大切です。
まとめ
「決める」と「決まる」は、どちらも「決定」に関係する動詞ですが、見ている方向が違います。
「決める」は、誰かが考えたり選んだりして答えを出すときに使います。
「決まる」は、予定や内容などが確定した結果を表します。
特に覚えておきたいのは、次の2つです。
- 人が何かを決める
- 何かが決まる
たとえば、
「私たちは会議の日を決めました。」
「会議の日が決まりました。」
のように、同じ出来事でも「行為」と「結果」で表現が変わります。
JLPT N3〜N2では、このような「意味は似ているけれど、文の中での働きが違う言葉」を正確に見分ける力が重要です。
単語の意味を覚えるだけではなく、実際の問題の中で「なぜこちらが自然なのか」を考える練習をすると、語彙問題だけでなく読解力も伸ばしやすくなります。
RJT(Rapid Japanese Training)では、JLPT対策の問題を実際に解きながら、似た表現の違いや自然な使い方をトレーニングできます。
「意味は分かるのに、いつも最後の2択で迷う」という人は、問題の中で使い分ける練習を続けてみてください。