導入
「出す」と「出る」は、日本語の日常会話でとてもよく使われる動詞です。
たとえば、
「ごみを出す」
「ごみが出る」
という2つの文は、どちらも自然な日本語です。
しかし、意味は同じではありません。
「出す」では、だれかがごみを外へ持っていく、という動きがあります。
一方、「出る」では、ごみが発生する、という状態を表すことができます。
このように、「出す」と「出る」は単語の意味だけを覚えていても、実際の会話や読解では迷いやすい言葉です。
大切なのは、
「だれかが何かを動かしているのか」
「人や物、結果などが出てくるのか」
という場面を見ることです。
今回は、日常会話、仕事、ニュース、JLPT読解などの具体的な場面から、「出す」と「出る」の違いを見ていきましょう。
まず場面で考えてみよう
朝、家を出る前に、ごみを捨てる場面を想像してください。
あなたが家の中にあるごみ袋を持って、外のごみ置き場まで運びます。
この場合は、
「ごみを出す」
と言います。
「出す」は、だれかが何かを外へ動かすときに使います。
では、料理をしたあと、たくさんの生ごみができた場合はどうでしょうか。
「料理をすると、たくさんごみが出る」
と言えます。
この場合、ごみを人が外へ運んでいるわけではありません。
料理をした結果として、ごみが発生しています。
つまり、
- 人が何かを外へ動かす → 出す
- 人や物、結果などが出てくる・発生する → 出る
という違いがあります。
「何をするか」だけでなく、「何が主語なのか」を見ると、使い分けが分かりやすくなります。
場面1:日常会話で使うなら
「出す」と「出る」は、どちらも日常会話で非常によく使います。
そのため、「出すのほうが会話的」「出るのほうが文章的」という単純な違いはありません。
違いは、その場面で人が何かを動かしているか、それとも物や人が自然に移動したり現れたりしているかです。
たとえば、友達と食事をしている場面です。
「冷蔵庫からジュースを出してくれる?」
これは、相手にジュースを冷蔵庫の中から外へ移動してほしいので、「出す」を使います。
一方、
「冷蔵庫から変な音が出ているよ。」
この場合は、音そのものが発生しています。そのため、「出る」を使います。
ほかにも、日常会話では次のように使います。
「財布をバッグから出した。」
自分が財布をバッグの中から外へ動かしているので、「出す」です。
「猫が部屋から出た。」
猫自身が部屋の外へ移動しているので、「出る」です。
このように、会話の中では、
「だれが何を動かしているのか」
に注目すると自然な言葉を選びやすくなります。
場面2:文章やニュースで使うなら
文章やニュースでも、「出す」と「出る」はどちらもよく使われます。
ただし、日常会話より意味の範囲が広くなるため、注意が必要です。
たとえばニュースで、
「政府は新しい方針を出した。」
という文があったとします。
ここでの「出す」は、物を外へ移動させる意味ではありません。
政府が方針を発表した、示した、という意味です。
一方、
「調査の結果、新しい問題が出た。」
という場合は、新しい問題が明らかになった、現れた、という意味になります。
仕事の文章でも、
「会社が新しい計画を出した。」
「会議で多くの意見が出た。」
のような使い分けがあります。
最初の文では、会社が計画を提示しています。
次の文では、会議の中で意見が現れています。
JLPTの読解では、「出す」と「出る」が必ずしも「外へ移動する」という意味で使われるとは限りません。
「答えを出す」
「結果が出る」
「結論を出す」
「意見が出る」
などの表現もよくあります。
読解問題では、動詞だけを見るのではなく、その前にある名詞と一緒に意味を考えることが大切です。
場面3:感情や評価が入るなら
「出す」と「出る」は、感情や人の状態を表すときにも使われます。
たとえば、
「彼は怒った声を出した。」
という文では、その人が声を出しています。
話す人の行動として表現しているので、「出す」です。
一方、
「彼の顔に笑顔が出た。」
と言うと、笑顔が自然に現れたような印象になります。
また、
「彼は本気を出した。」
という表現もあります。
これは、持っている力や能力を実際に使う、という意味です。
「もっと本気を出してください。」
と言えば、相手にもっと力を使ってほしいという意味になります。
一方、
「練習の成果が出た。」
では、努力の結果が目に見える形で現れたことを表しています。
ここでも、
「人が意識的に何かを表す・使う」なら「出す」
「状態や結果が現れる」なら「出る」
という考え方が役立ちます。
ただし、「出る」が必ず無意識というわけではありません。
たとえば、
「私は明日の会議に出ます。」
という場合は、自分の意思で会議に参加しています。
それでも日本語では「会議に出る」と言います。
そのため、「意識的か無意識か」だけで判断するのではなく、その言葉がどんな名詞と組み合わされているかを見ることも重要です。
2つの語の違いを整理
「出す」と「出る」の基本的な違いは、次のように考えると分かりやすくなります。
- 「出す」は、だれかが何かを外へ動かすときに使う
- 「出る」は、人や物が外へ移動するときに使う
- 「出す」は、人が答え・結論・意見・力などを表したり提示したりするときにも使う
- 「出る」は、結果・問題・意見・音・症状などが現れたり発生したりするときにも使う
- 「出す」は基本的に「~を出す」の形になる
- 「出る」は基本的に「~が出る」の形になる
つまり、最も大切なのは、
「何かを出す人・原因があるのか」
「何かそのものが出てくるのか」
という視点です。
「出す=人がすること」「出る=自然に起こること」と覚えるだけでは不十分です。
「会議に出る」「学校を出る」のように、人が自分の意思で行動していても「出る」を使う場合があるからです。
文全体の形と、前後の言葉を一緒に見るようにしましょう。
例文で確認
1. 毎朝8時までにごみを出してください。
「ごみを外のごみ置き場へ持っていく」という場面です。
人がごみを動かしているので、「出す」を使います。
2. この店では毎日たくさんのごみが出ます。
店を営業することで、ごみが発生するという意味です。
ごみそのものが発生するので、「出る」を使います。
3. 先生が宿題を出しました。
先生が学生に宿題を与えた、という意味です。
「宿題を出す」は学校で非常によく使う表現です。
4. 試験にこの文法が出ました。
試験問題の中に、その文法が現れたという意味です。
JLPTについて話すときも、
「この単語はN3によく出る。」
のように使えます。
5. みんなで話し合って、結論を出しました。
考えたり議論したりした結果、結論を決めたという意味です。
人が考えて結論を作るため、「結論を出す」と言います。
6. 来週、試験の結果が出ます。
試験の結果が発表される、明らかになるという意味です。
結果そのものが現れるため、「結果が出る」を使います。
7. 分からなかったので、大きな声を出して先生を呼びました。
人が声を発しているため、「声を出す」です。
「声が出る」になると、意味が少し変わります。
たとえば、
「緊張して声が出なかった。」
なら、話そうとしても声が出せなかった状態を表します。
8. 長く練習したので、少しずつ成果が出てきました。
努力によって良い結果が現れ始めた場面です。
「成果が出る」は、仕事や勉強について話すときによく使います。
9. 明日の会議には私も出ます。
ここでの「出る」は「参加する」という意味です。
外へ移動する意味ではありません。
「会議に出る」「大会に出る」「テレビに出る」などは、まとめて覚えておくと便利です。
10. この問題の答えを出してください。
考えて答えを示してほしい、という意味です。
「答えを出す」は、勉強だけでなく仕事の場面でも使えます。
JLPT読解での見方
JLPTの読解で「出す」と「出る」が出てきたら、最初に「外へ移動する」という意味だけを考えないようにしましょう。
まず、直前の名詞を確認してください。
たとえば、
「結果が出る」
なら、結果が明らかになるという意味です。
「結果を出す」
なら、人や組織が良い成果を上げる、という意味になることがあります。
この2つはよく似ていますが、視点が違います。
「努力の結果が出た。」
では、結果が現れたことに注目しています。
「彼は仕事で結果を出した。」
では、彼が成果を上げたことに注目しています。
同じ「結果」という名詞でも、「が出る」と「を出す」でニュアンスが変わります。
また、
「意見が出る」
「意見を出す」
にも違いがあります。
「会議でいろいろな意見が出た。」
なら、会議の中で意見がいくつも提示されたという全体的な状況を表します。
「参加者が意見を出した。」
なら、参加者が自分の意見を述べた行動に注目しています。
JLPTでは、このように助詞や主語、前後の文脈によって意味を判断する必要があります。
単語を一つずつ日本語から母語へ訳すだけではなく、
「だれの行動を説明しているのか」
「何が現れたのか」
「何を提示したのか」
まで確認すると、文章の細かいニュアンスが読み取りやすくなります。
まとめ
「出す」と「出る」は、どちらもN3レベルでよく使われる基本的な動詞ですが、実際にはさまざまな場面で使われます。
基本の考え方は、
- 人が何かを外へ動かす → 出す
- 人や物が外へ移動する → 出る
- 答え・結論・力などを示す → 出す
- 結果・問題・音などが現れる → 出る
です。
ただし、
「会議に出る」
「試験に出る」
「結果を出す」
「声が出る」
のように、単純な「外に出す・外に出る」だけでは理解できない表現もたくさんあります。
だからこそ、日本語の動詞は意味だけでなく、「どんな場面で、どんな名詞と一緒に使われるか」を覚えることが大切です。
RJT(Rapid Japanese Training)では、JLPTで必要な語彙や文法を、実際の問題を解きながら繰り返し確認できます。
「意味は分かるけれど、問題になると迷ってしまう」
「似ている言葉を文脈から判断できるようになりたい」
という方は、問題を解きながら日本語の感覚を身につけてみてください。