「ていく」と「てくる」は、日本語学習者がよく出会うのに、意外と最後まで迷いやすい表現です。
「だんだん暑くなってきた」は自然に聞こえるのに、「これから暑くなってくる」と「これから暑くなっていく」はどう違うのか。
「日本語を勉強していきます」と「日本語を勉強してきました」は、どこが違うのか。
この2つをきちんと区別するコツは、とてもシンプルです。
「ていく」は、今ここから先へ進んでいく感覚。
「てくる」は、どこかから今ここへ近づいてくる感覚。
このイメージをつかむだけで、意味の違いがぐっと見えやすくなります。
「ていく」は今から先へ進む
「ていく」は、話し手のいる「今」を出発点にして、その先へ向かうイメージです。
場所について言うときは遠ざかる感じ、時間について言うときは未来へ進む感じ、変化について言うときはこれからそうなっていく感じになります。
例えば、次のように使います。
- これからもっと日本語を勉強していきます。
- 人口はこれから減っていくでしょう。
- 彼はあいさつをして、駅のほうへ歩いていった。
どの文にも、「今」を起点として、その先へ流れていく感覚があります。
「てくる」はどこかから今へ届く
一方で「てくる」は、別の場所や過去の時点から、話し手のいる「今」へ近づいてくるイメージです。
空間ならこちらへ来る感じ、時間なら過去から今へ変化が続いて届く感じになります。
例えば、次のように言います。
- 向こうから子どもが走ってきた。
- だんだん暑くなってきました。
- 日本語の勉強が楽しくなってきた。
こちらは、「何かが今の自分のところまで来た」「変化が今はっきり感じられるところまで進んだ」というニュアンスです。
時間の流れで考えると分かりやすい
「ていく」と「てくる」は、時間の流れと一緒に考えると、いちばん理解しやすくなります。
「ていく」は、今から未来を見る表現です。
これから先、どのように進んでいくかに目線があります。
- これから物価は上がっていくと思います。
- 少子高齢化は今後も進んでいくでしょう。
「てくる」は、過去から今までの変化を見る表現です。
今この時点で、変化が感じられることを表します。
- 最近、日本語が前より分かるようになってきました。
- 春になって、少しずつ暖かくなってきた。
つまり、
未来へ伸びていくのが「ていく」、
過去から今へ届いてくるのが「てくる」
と考えると、使い分けがかなり楽になります。
気持ちや状態の変化にも使える
この2つは、単なる移動だけではありません。
気持ちの変化や、能力の変化、社会の流れにもよく使われます。
- これから自信をつけていきたい。
- 勉強を続けてきて、少し自信がついてきた。
前の文は、今から先の変化を見ています。
後ろの文は、ここまでの積み重ねによって生まれた変化を、今感じています。
同じ「自信」でも、視点の置き方が違うのです。
よくある迷い方
学習者が迷いやすいのは、「どちらも変化を表している」ように見えるからです。
でも、見る方向が違います。
「これから」があるときは、「ていく」が自然になりやすいです。
- これから日本語力を伸ばしていきたい。
- これからもっと寒くなっていくでしょう。
反対に、「最近」「だんだん」「もう」など、今の変化を実感しているときは、「てくる」がよく合います。
- 最近、漢字が読めるようになってきた。
- だんだん人が増えてきた。
同じ出来事でも、視点によって表現が変わるのが、日本語のおもしろさでもあります。
まとめ
「ていく」と「てくる」は、どちらもよく使う表現ですが、違いははっきりしています。
「ていく」は、今から先へ。
「てくる」は、どこかから今へ。
この感覚をつかむと、文法問題だけでなく、会話や作文でも自然な日本語に近づけます。
似た表現で迷ったときほど、意味ではなく「視点の向き」を考えるのがコツです。
RJTでは、このような紛らわしい文法の違いも、やさしく整理しながら、実際の例文と問題演習でしっかり学べます。
日本語の感覚を一つずつクリアにしたい方は、Rapid Japanese Training をご覧ください。