読解でつまずきやすい指示語の読み方 「これ」「それ」「あれ」は何を指す?

2026年04月23日(木) 06時58分19秒

更新: 2026年05月21日(木) 07時53分11秒

読解でつまずきやすい指示語の読み方 「これ」「それ」「あれ」は何を指す?

読解問題で意外と多い失点ポイントが、指示語の読み違いです。

「これ」「それ」「あれ」が出てきたとき、なんとなく近くの言葉を当てはめて読んでしまい、文章全体の意味を取り違える。そんな経験はありませんか。

特にJLPTの読解では、指示語を正しくたどれるかどうかで、筆者の主張や理由、対比の構造が見えやすくなります。逆にここで迷うと、文章は読めているのに選択肢だけ外す、ということが起こります。

この記事では、「これ」「それ」「あれ」を読むときに何を見ればいいのかを、実戦向けに分かりやすく整理します。

まず確認:「これ」「それ」「あれ」は何を指す言葉か

「これ」「それ」「あれ」は、前に出たものや、話し手が意識しているものを指す言葉です。

基本的には、次のように説明されます。

「これ」は、話し手に近いものを指します。

「それ」は、聞き手に近いもの、またはすでに話題に出たものを指します。

「あれ」は、話し手からも聞き手からも離れたもの、または共有された過去のものを指します。

たとえば、会話なら、

「これは私の本です。」
「それはあなたのですか。」
「あれは昨日見た建物です。」

のように、目の前のものや、互いに知っているものを指します。

しかし、読解問題では、目の前に物があるわけではありません。文章の中で使われる「これ」「それ」「あれ」は、物ではなく、前に書かれた内容や考えを指すことが多いのです。

ここが、読解で指示語が難しくなる理由です。

指示語は「近くの名詞」を指すとは限らない

まず大事なのは、「指示語の直前にある名詞が答え」とは限らない、ということです。

たとえば、読解の中の「これ」は、単語ひとつではなく、

・直前の一文全体
・前の二文で述べた内容のまとまり
・筆者の判断や評価
・前に出てきた具体例そのもの

を指していることがあります。

つまり、指示語は「言葉」ではなく「内容」を指すことが多いのです。

ここを意識するだけで、読み方はかなり変わります。

「これ」は、いま話題にしている内容を受けやすい

まず、「これ」から見ていきましょう。

読解の中の「これ」は、今まさに説明している内容を受けることが多いです。話の中心にある内容を、短くまとめて指す働きがあります。

例1

日本では近年、働き方に対する考え方が変わってきている。給料だけでなく、自分の時間や成長の機会を重視する人も増えている。これは、企業の採用方法にも影響を与えている。

この場合の「これは」は、直前の「人」だけを指しているわけではありません。

指しているのは、

・働き方に対する考え方が変わってきていること
・給料だけでなく、時間や成長の機会を重視する人が増えていること

という前の内容全体です。

つまり、「これ」は、直前まで説明された変化全体を受けています。

このように、「これ」が出たら、まず「直前の一語」ではなく、「今説明されていた内容のまとまり」を探すことが大切です。

「それ」は、少し距離を置いて前の内容を受けやすい

次に、「それ」です。

「それ」は、前に出た内容を受ける点では「これ」と似ています。ただし、「これ」より少し距離を置いて、すでに示された考えや、相手の発言、前文の内容を受けることが多くなります。

例2

多くの学生は、試験前になると単語だけをまとめて覚えようとする。しかし、それだけでは読解問題で安定して点を取ることは難しい。

この場合の「それだけ」は、

「試験前に単語だけをまとめて覚えようとすること」

を指しています。

ここで「それ」は、前の文で述べられた学習方法を受けています。そして、その方法だけでは不十分だ、と次の文で評価しています。

「それ」が出たときは、「前に出た考え・方法・発言を受けているのではないか」と考えると、読みやすくなります。

「あれ」は、読解本文では頻度が高くないが、会話文では注意

「あれ」は、読解本文の説明文では「これ」「それ」ほど多くありません。どちらかというと、会話文やエッセイ、体験談の中で使われやすい表現です。

「あれ」は、話し手と聞き手がすでに知っているもの、過去に共有された出来事、少し離れた内容を指すことがあります。

例3

去年の発表会を覚えていますか。あれは、私にとって大きな転機でした。

この場合の「あれ」は、「去年の発表会」を指しています。

ただし、「あれ」は単なる物や出来事だけでなく、その出来事全体の印象を含んで指すこともあります。

この例でも、「あれ」は発表会というイベントだけでなく、発表会での経験全体を含んでいるように読めます。

JLPTの読解では、「あれ」が出たら、会話の前提や、少し前に出た出来事を確認するとよいでしょう。

「これ・それ・あれ」から「この・その・あの」へ広がる

ここまで見てきた「これ」「それ」「あれ」は、名詞のように単独で使われます。

一方で、文章の中では、

・この点
・その理由
・あの出来事

のように、「この・その・あの」の形でもよく出てきます。

これは、「これ・それ・あれ」と同じ指示の考え方を、後ろの名詞につなげた形です。

たとえば、

「この点」は、「今述べた重要なポイント」
「その理由」は、「前に述べたことの理由」
「あの出来事」は、「過去に共有された出来事」

を指します。

つまり、「この・その・あの」は、「これ・それ・あれ」と別のものとして覚えるより、同じ指示語の仲間として見ると分かりやすくなります。

「こうした」「そうした」も、指示語の仲間として読む

読解では、「これ」「それ」「あれ」だけでなく、

・こうした変化
・そうした考え
・このような状況
・そのような理由

のような形もよく出てきます。

これらは、厳密には「これ・それ・あれ」そのものではありませんが、前の内容をまとめて受ける働きがあります。

つまり、読解では「指示語の仲間」として扱うとよい表現です。

ただし、ここで大切なのは、「こうした」を突然別の文法として覚えることではありません。

「こうした変化」は、「このような変化」と近く、前に説明された変化全体をまとめて指す表現です。

例4

日本では近年、働き方に対する考え方が変わってきている。給料だけでなく、自分の時間や成長の機会を重視する人も増えている。こうした変化は、企業の採用方法にも影響を与えている。

この場合の「こうした変化」は、前の内容全体をまとめています。

つまり、

・働き方に対する考え方が変わってきていること
・時間や成長の機会を重視する人が増えていること

をまとめて、「こうした変化」と言い換えているのです。

ここでのポイントは、「こうした」という語そのものよりも、前の内容を一つのまとまりとして受けていることです。

「これ」が「前の内容全体」を受けることがあるのと同じように、「こうした変化」も前の内容全体を受けています。

指示語の直後にある「評価語」に注目する

指示語の意味がつかみにくいときは、その直後の表現を見るとヒントが出ます。

たとえば、

・これは重要な点だ
・それが問題なのだ
・あれは大きな変化だった
・この点を見落としてはいけない
・その理由は二つある

のように、指示語のあとには評価や結論が続くことがよくあります。

このとき大切なのは、「何が重要なのか」「何が問題なのか」「何の理由なのか」を前にさかのぼって探すことです。

つまり、指示語を単独で見るのではなく、

  1. 指示語のあとで何を言っているかを確認する
  2. その評価に当てはまる前の内容を探す

という順番で読むと、かなり当たりやすくなります。

試験で迷ったら、「名詞」ではなく「言い換え」を探す

読解で本当に役立つのは、指示語を「言い換え表現」として見ることです。

たとえば本文で、

・都市に人が集中している
・地方では働く場が減っている
・若者が地元を離れる

と続いたあとに、

「このような状況が続けば、地域社会の維持は難しくなる」

とあれば、「このような状況」は前の三つをまとめた言い換えです。

読解の筆者は、同じ内容を何度もそのまま繰り返しません。少し形を変えながら前の内容を受けます。その代表が指示語です。

だからこそ、指示語が出たら「同じ意味を、別の言い方でまとめている部分はどこか」と考えるのが効果的です。

こんな読み方をすると間違えやすい

指示語問題で失点しやすい人には、共通するクセがあります。

1. いちばん近い名詞だけを見る

近くにある単語だけを拾うと、内容全体を受けている指示語を外しやすくなります。

2. 一文だけで判断する

実際には、前の二文や三文をまとめて受けていることもあります。

3. 「これ・それ・あれ」の距離だけで決める

「これ」は近い、「それ」は少し遠い、「あれ」はもっと遠い、という基本は大切です。

しかし、読解では物理的な距離ではなく、文脈上どの内容を受けているかが重要です。

「これだから直前だけ」
「それだからかなり前」
のように機械的に決めると、間違えることがあります。

指示語は「筆者の整理ポイント」でもある

見方を変えると、指示語は難しいものではなく、むしろ筆者が内容を整理してくれているサインでもあります。

筆者は長い説明をしたあとで、

・これ
・それ
・この点
・その理由
・こうした考え
・その結果

のような形で話をまとめ直します。

つまり、指示語を正しく読めるようになると、文章の構造も見えやすくなります。

読解が速い人は、ただ日本語が速く読めるのではありません。こうした「まとめのサイン」を見つけるのが上手なのです。

実戦で使える、指示語の読み方3ステップ

最後に、試験中にそのまま使える形で整理します。

ステップ1

指示語を見つけたら、前の一文だけでなく、二文くらいまで広げて見る

ステップ2

指示語のあとに来る評価や結論を確認する

ステップ3

単語ではなく、意味のまとまりとして最も自然な部分を選ぶ

この3ステップだけでも、「なんとなく読む」から「根拠を持って読む」へ変わります。

関連する推量・判断表現をまとめて確認したい場合は、「JLPTで迷いやすい推量・判断表現まとめ」も参考になります。

否定表現全体の違いを整理したい場合は、「JLPTで迷いやすい否定表現まとめ」も参考になります。

まとめ

「これ」「それ」「あれ」が難しく感じるのは、単語だけを探そうとしてしまうからです。

本当に見るべきなのは、前に書かれた内容のまとまりです。指示語は、そのまとまりを短く受けるための道具です。

また、読解では「これ・それ・あれ」だけでなく、「この・その・あの」「こうした・そうした」「このような・そのような」も、同じように前の内容を受ける表現として出てきます。

指示語を一語だけで処理するのではなく、文章のつながりを見ること。これが、読解で安定して点を取るための大切な読み方です。

RJTでは、読解だけでなく、文法・語彙・聴解もあわせて学びながら、日本語のつながりを立体的に理解できるように設計しています。問題演習に加えて、ポップアップ辞書、音声、解答時間の見える化、学習ログの確認まで一つの流れで使えるので、「分かったつもり」で終わりにくいのが特長です。

指示語で迷いやすい方ほど、文章のつながりを意識しながら、実際の問題で読み方を試してみてください。正解率は、知識量だけでなく、読み方で変わります。

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