読解問題で意外と多い失点ポイントが、指示語の読み違いです。
「これ」「それ」「あれ」が出てきたとき、なんとなく近くの言葉を当てはめて読んでしまい、文章全体の意味を取り違える。そんな経験はありませんか。
特にJLPTの読解では、指示語を正しくたどれるかどうかで、筆者の主張や理由、対比の構造がきれいに見えるようになります。逆にここで迷うと、文章は読めているのに選択肢だけ外す、ということが起こります。
この記事では、指示語を読むときに何を見ればいいのかを、実戦向けに分かりやすく整理します。
指示語は「近くの名詞」を指すとは限らない
まず大事なのは、「指示語の直前にある名詞が答え」とは限らない、ということです。
たとえば、読解の中の「これ」は、単語ひとつではなく、
- 直前の一文全体
- 直前の二文で述べた内容のまとまり
- 話し手の判断や評価
- 前に出てきた具体例そのもの
を指していることがあります。
つまり、指示語は「言葉」ではなく「内容」を指すことが多いのです。
ここを意識するだけで、読み方はかなり変わります。
まず見るべきは「直前の一文」ではなく「意味のまとまり」
指示語が出たら、最初に確認したいのは「どの部分がひとつの意味のかたまりになっているか」です。
たとえば、次のような流れです。
例1
日本では近年、働き方に対する考え方が変わってきている。給料だけでなく、自分の時間や成長の機会を重視する人も増えている。こうした変化は、企業の採用方法にも影響を与えている。
この場合の「こうした変化」は、直前の一語ではなく、
- 働き方に対する考え方が変わってきていること
- 給料だけでなく時間や成長を重視する人が増えていること
という前の内容全体をまとめて指しています。
指示語を見たら、単語レベルで探すのではなく、「何の話をまとめ直しているのか」を見るのがコツです。
「これ」は近く、「それ」は少し離れた内容、でも機械的に決めない
日本語教育では、「これ」は話し手に近いもの、「それ」は聞き手に近いもの、「あれ」は双方から離れたもの、と説明されることが多いです。もちろん基本としては大切です。
ただし、読解問題では、物理的な距離よりも「文脈上どの内容を受けているか」のほうが重要です。
文章の中では、次のように考えると分かりやすくなります。
「これ」
今まさに話題にしている内容を、強く受けることが多いです。
「それ」
少し距離を置いて、前に出た考えや相手の発言を受けることが多いです。
「あれ」
会話文や共有された前提の中で使われやすく、読解本文では頻度はそれほど高くありません。
ただし、試験では「これは必ずこう」と決め打ちしないことが大切です。最終的には、前後の文脈に合うかどうかで判断します。
指示語の直後にある「評価語」に注目すると分かりやすい
指示語の意味がつかみにくいときは、その直後の表現を見るとヒントが出ます。
たとえば、
- これは重要な点だ
- それが問題なのだ
- あれは大きな変化だった
のように、指示語のあとには評価や結論が続くことがよくあります。
このとき大切なのは、「何が重要なのか」「何が問題なのか」を前にさかのぼって探すことです。
つまり、指示語を単独で見るのではなく、
- 指示語のあとで何を言っているかを確認する
- その評価に当てはまる前の内容を探す
という順番で読むと、かなり当たりやすくなります。
試験で迷ったら、「名詞」ではなく「言い換え」を探す
読解で本当に役立つのは、指示語を「言い換え表現」として見ることです。
たとえば本文で、
- 都市に人が集中している
- 地方では働く場が減っている
- 若者が地元を離れる
と続いたあとに、
「このような状況が続けば、地域社会の維持は難しくなる」
とあれば、「このような状況」は前の三つをまとめた言い換えです。
読解の筆者は、同じ内容を何度もそのまま繰り返しません。少し形を変えながら前の内容を受けます。その代表が指示語です。
だからこそ、指示語が出たら「同じ意味を、別の言い方でまとめている部分はどこか」と考えるのが効果的です。
こんな読み方をすると間違えやすい
指示語問題で失点しやすい人には、共通するクセがあります。
1. いちばん近い名詞だけを見る
近くにある単語だけを拾うと、内容全体を受けている指示語を外しやすくなります。
2. 一文だけで判断する
実際には、前の二文や三文をまとめて受けていることもあります。
3. 文法だけで処理しようとする
「これ・それ・あれ」の基本知識は大切ですが、読解では最終的に文脈が優先です。
指示語は「筆者の整理ポイント」でもある
見方を変えると、指示語は難しいものではなく、むしろ筆者が内容を整理してくれているサインでもあります。
筆者は長い説明をしたあとで、
- この点
- その理由
- こうした考え
- その結果
のような形で話をまとめ直します。
つまり、指示語を正しく読めるようになると、文章の構造も見えやすくなります。
読解が速い人は、ただ日本語が速く読めるのではありません。こうした「まとめのサイン」を見つけるのが上手なのです。
実戦で使える、指示語の読み方3ステップ
最後に、試験中にそのまま使える形で整理します。
ステップ1
指示語を見つけたら、まず前の一文だけでなく二文くらいまで広げて見る
ステップ2
指示語のあとに来る評価や結論を確認する
ステップ3
単語ではなく、意味のまとまりとして最も自然な部分を選ぶ
この3ステップだけでも、「なんとなく読む」から「根拠を持って読む」へ変わります。
まとめ
「これ」「それ」「あれ」が難しく感じるのは、単語を探そうとしているからです。
本当に見るべきなのは、前に書かれた内容のまとまりです。指示語は、そのまとまりを短く受けるための道具です。
読解で安定して点を取りたいなら、語彙や文法だけでなく、こうした文章のつながりにも慣れていくことが大切です。
RJTでは、読解だけでなく、文法・語彙・聴解もあわせて学びながら、日本語のつながりを立体的に理解できるように設計しています。問題演習に加えて、ポップアップ辞書、音声、解答時間の見える化、学習ログの確認まで一つの流れで使えるので、「分かったつもり」で終わりにくいのが特長です。
指示語で迷いやすい方ほど、文章のつながりを意識しながら、実際の問題で読み方を試してみてください。正解率は、知識量だけでなく、読み方で変わります。