日本語の文章を読んでいると、ときどき「〜まい」という形に出会うことがあります。
たとえば、こんな文です。
「彼はもう戻るまい。」
現代の日常会話では、あまりよく使われません。
そのため、日本語学習者にとっては「これは何だろう」と止まりやすい表現です。
でも、心配しなくて大丈夫です。
否定推量の「まい」は、多くの場合、現代語の「ないだろう」に置き換えて考えると理解しやすくなります。
「彼はもう戻るまい。」
つまり、
「彼はもう戻らないだろう。」
という意味です。
「ないだろう」は現代的で自然な否定推量
まず、「ないだろう」から見てみましょう。
「ないだろう」は、現代日本語でよく使われる否定推量です。
何かについて、
「たぶん〜ない」
「〜ないと思う」
「〜ない可能性が高い」
と言いたいときに使います。
例文を見てみましょう。
「明日は雨が降らないだろう。」
「彼はその話を知らないだろう。」
「この問題は試験には出ないだろう。」
どれも、話し手が状況から判断して「そうならない」と予想しています。
つまり、「ないだろう」は、現代の会話や説明文で使いやすい、普通の否定推量です。
「まい」は古め・硬めの否定推量
一方、「まい」は、少し古めで、硬い印象のある表現です。
意味は、文脈によって大きく二つあります。
一つ目は、否定推量です。
「〜ないだろう」
「たぶん〜ない」
という意味です。
例文です。
「この寒さでは、桜はまだ咲くまい。」
「彼ほどの人が、そんな初歩的なミスをするまい。」
「今から出ても、もう間に合うまい。」
これらは、それぞれ次のように考えるとわかりやすくなります。
「桜はまだ咲かないだろう。」
「そんな初歩的なミスをしないだろう。」
「もう間に合わないだろう。」
読解で「まい」が出てきたら、まずは「ないだろう」に置き換えて読んでみてください。
かなりの文は、それだけで意味が見えてきます。
「まい」には意志を表す使い方もある
ただし、「まい」はいつも「ないだろう」になるわけではありません。
もう一つ大事なのが、否定の意志です。
この場合は、
「〜しないつもりだ」
「〜するのはやめよう」
「決して〜しない」
という意味になります。
例文です。
「二度と同じ失敗はするまい。」
「もう彼には頼るまい。」
「このことは誰にも話すまい。」
この場合の「まい」は、未来の予想ではありません。
話し手自身の決意を表しています。
つまり、
「二度と同じ失敗はしないつもりだ。」
「もう彼には頼らないつもりだ。」
「このことは誰にも話さないでおこう。」
という意味です。
ここが、「ないだろう」との大きな違いです。
見分けるポイントは「予想」か「決意」か
「まい」を読んだときは、次のように考えると整理しやすくなります。
まず、誰かの行動や出来事について、話し手が予想しているなら「ないだろう」に近いです。
「彼は来るまい。」
これは、
「彼は来ないだろう。」
という意味です。
一方、話し手が自分の行動について、強く決めているなら「しないつもりだ」に近いです。
「もう迷うまい。」
これは、
「もう迷わないつもりだ。」
という意味です。
同じ「まい」でも、読んでいる方向が違います。
外の出来事を予想しているなら、否定推量。
自分の行動を決めているなら、否定の意志。
この区別ができると、「まい」はかなり読みやすくなります。
「ないだろう」は古くない。「まい」は文章的
「ないだろう」は、現代語として自然に使えます。
会話でも、説明文でも、ニュースのコメントでも使えます。
「彼は今日は来ないだろう。」
「この方法ではうまくいかないだろう。」
一方、「まい」は日常会話では少し古く、かたい響きがあります。
「彼は今日は来るまい。」
「この方法ではうまくいくまい。」
意味はわかりますが、普通の会話ではやや文学的、または硬い印象になります。
そのため、自分で話すときは、基本的には「ないだろう」を使えば十分です。
「まい」は、読解で出てきたときに理解できればよい表現だと考えると、学習の負担が軽くなります。
読解での対処法
読解問題で「まい」が出てきたら、次の順番で処理すると簡単です。
まず、「まい」を見つけます。
次に、「ないだろう」に置き換えて読んでみます。
「成功するまい」
なら、
「成功しないだろう」
「許されまい」
なら、
「許されないだろう」
これで自然に読めるなら、否定推量です。
もし、主語が「私」や話し手自身で、決意のように読めるなら、「しないつもりだ」に置き換えます。
「忘れるまい」
なら、
「忘れないつもりだ」
「負けるまい」
なら、
「負けないつもりだ」
このように、まずは現代語に変換してから意味を取るのが、いちばん安全です。
「あるまい」はよく出る形
「まい」の中でも、特によく見るのが「あるまい」です。
「そんなことはあるまい。」
これは、
「そんなことはないだろう。」
という意味です。
「問題はあるまい。」
これは、
「問題はないだろう。」
という意味です。
「あるまい」は、文章や少しかたい表現の中で比較的見かけやすい形です。
読解では、「ないだろう」と考えればかなり理解しやすくなります。
まとめ
「まい」と「ないだろう」は、どちらも否定的な未来や可能性を表すことがあります。
ただし、使われる場面と響きが違います。
「ないだろう」は、現代的で自然な否定推量です。
「まい」は、古め・硬めの表現で、読解や文学的な文章に出やすい形です。
そして、「まい」には二つの読み方があります。
一つは、
「〜ないだろう」
という否定推量。
もう一つは、
「〜しないつもりだ」
という否定の意志。
読解で「まい」が出てきたら、まずは「ないだろう」に置き換えてみる。
それで合わなければ、「しないつもりだ」と考えてみる。
この順番で処理すれば、古めの表現が出てきても慌てずに読めます。
日本語の文法は、形だけを見ると難しく感じることがあります。
でも、現代語に置き換えるコツを知っておくと、文章の意味はぐっと取りやすくなります。
RJTでは、このような紛らわしい文法表現を、例文・解説・問題練習を通して効率よく学べます。
「見たことはあるけれど、意味がはっきりしない」表現を一つずつ整理したい方は、ぜひRJTで学習を続けてみてください。