日本語の文章を読んでいると、ときどき次のような表現に出会います。
何度注意しても聞かず、最後には無断で休む始末だ。
この「始末だ」は、ただ「結果だ」と言っているだけではありません。
話し手は、その結果を見て、
「ここまで悪くなってしまった」
「困ったことになった」
「あきれている」
「残念だ」
という気持ちを込めています。
つまり、「始末だ」は、悪い流れの最後に来るよくない結果を強く印象づける文型です。
この記事では、「始末だ」の意味、使い方、形、注意点を、例文と一緒にわかりやすく整理します。
「始末だ」の基本的な意味
「始末だ」は、
悪い状況が続いた結果、最後にはさらによくない状態になった
という意味を表します。
ポイントは、「急に悪い結果が起きた」というよりも、その前に悪い流れがあることです。
たとえば、次の文を見てください。
彼は遅刻が多く、注意されても直さず、ついには無断欠勤する始末だ。
この文では、いきなり「無断欠勤した」と言っているのではありません。
その前に、
遅刻が多い
注意されても直さない
そして最後に無断欠勤する
という流れがあります。
このように、「始末だ」は、悪いことが積み重なったあとに来る、最終的な悪い結果を表すのです。
「始末だ」は話し手の評価が強い表現
「始末だ」は、客観的に結果を説明するだけの表現ではありません。
話し手の中に、
困った
ひどい
あきれた
残念だ
どうしようもない
という評価が含まれます。
たとえば、
彼は宿題を忘れ、教科書も忘れ、最後には筆記用具まで忘れる始末だ。
この文は、単に「彼は筆記用具を忘れた」という意味ではありません。
「宿題も忘れ、教科書も忘れ、さらに筆記用具まで忘れた。あきれてしまう」という感じがあります。
そのため、「始末だ」は、少し強い言い方です。
日常会話でも使えますが、相手を直接批判する場面では少しきつく聞こえることがあります。
形は「動詞の辞書形+始末だ」
基本の形は、次の通りです。
動詞の辞書形+始末だ
例文を見てみましょう。
彼は仕事を先延ばしにし続け、結局、締め切りに間に合わない始末だ。
何度も説明したのに、彼女は同じミスを繰り返す始末だ。
店の管理がずさんで、ついには商品がどこにあるのか誰もわからない始末だ。
どの例文も、前に悪い流れがあり、その結果としてさらに困った状態になっています。
「始末だ」はよい結果には使いにくい
「始末だ」は、基本的によくない結果に使います。
そのため、次のような文は不自然です。
彼は毎日努力して、ついには試験に合格する始末だ。
「合格する」はよい結果なので、「始末だ」とは合いません。
この場合は、次のように言うほうが自然です。
彼は毎日努力して、ついに試験に合格した。
つまり、「始末だ」は、うれしい結果や望ましい結果を表す表現ではありません。
「悪い流れの最後」という感覚を忘れないことが大切です。
「こんな始末だ」「この始末だ」もよく使う
「始末だ」は、文末だけでなく、
こんな始末だ
この始末だ
という形でもよく使われます。
たとえば、
きちんと準備したつもりだったのに、実際に始めてみたらこの始末だ。
これは、
実際の結果がひどい
思っていたより状態が悪い
残念な状況になっている
という意味です。
「この始末だ」は、目の前の悪い状態を指して、「見ての通り、こんなひどい状態だ」と言う表現です。
少し感情的な言い方なので、文章でも会話でも、批判や失望のニュアンスが出ます。
「結果だ」との違い
「始末だ」と似て見える表現に「結果だ」があります。
しかし、この二つはかなり違います。
「結果だ」は、単に原因と結果を説明する表現です。
練習不足の結果、試合に負けた。
これは比較的客観的な言い方です。
一方で、
練習をさぼり続け、最後には試合にも出られない始末だ。
と言うと、話し手の批判やあきれた気持ちが強く出ます。
「結果だ」は中立的に使えますが、「始末だ」は悪い評価を含みやすい表現です。
「羽目になる」との違い
「始末だ」と似た表現に「羽目になる」もあります。
「羽目になる」は、望ましくない状況に追い込まれるという意味です。
たとえば、
電車が止まり、歩いて帰る羽目になった。
これは、「本当は歩きたくなかったが、そうせざるを得なかった」という意味です。
一方、
計画を立てずに出発し、道に迷い、最後には夜中まで歩き回る始末だ。
この場合は、悪い流れが積み重なり、最後にひどい結果になった感じが強く出ます。
「羽目になる」は、避けたかった状況に追い込まれること。
「始末だ」は、悪い行動や状態が続いた結果、最後に困った状態になること。
このように整理するとわかりやすくなります。
読解で「始末だ」が出たら、前の流れを見る
読解問題で「始末だ」が出たときは、その文だけを見て判断しないことが大切です。
必ず前の文を見て、
何が続いていたのか
どんな問題が積み重なっていたのか
最後にどんな悪い結果になったのか
話し手はそれをどう評価しているのか
を確認しましょう。
「始末だ」は、前の流れを受けて、「その結果、こんな困ったことになった」とまとめる表現です。
そのため、読解では文章全体の流れをつかむ手がかりになります。
例文で感覚をつかもう
ここで、もう少し例文を見てみましょう。
彼は会議の資料を作らず、連絡にも返信せず、当日になって欠席する始末だ。
この文では、無責任な行動が続いた結果、最後に欠席するという悪い結果になっています。
部屋を片づけないまま放っておいたら、必要な書類まで見つからない始末だ。
ここでは、片づけない状態が続いた結果、必要なものまで見つからなくなっています。
彼女は体調が悪いのに無理を続け、ついには入院する始末だ。
この文では、無理を続けた結果、さらに悪い状態になったことを表しています。
何度もルールを説明したのに、彼はまた同じ違反をする始末だ。
ここでは、注意や説明があったにもかかわらず、同じ問題が繰り返されたことへのあきれが出ています。
学習者が間違えやすいポイント
「始末だ」で特に注意したいのは、次の二つです。
一つ目は、よい結果には基本的に使わないことです。
努力して成功した、練習して上達した、勉強して合格した、というような前向きな結果には合いません。
二つ目は、ただの一回の出来事には使いにくいことです。
「財布を落とす始末だ」だけだと、少し唐突に聞こえることがあります。
自然にするには、前に悪い流れを置きます。
寝坊して、急いで家を出て、さらに財布を落とす始末だ。
このようにすると、「悪いことが重なった結果」という流れが見えます。
まとめ
「始末だ」は、悪い流れの最後に来る、さらによくない結果を表す文型です。
単なる「結果」ではなく、話し手のあきれ、困惑、批判、残念な気持ちが含まれます。
形は、基本的に「動詞の辞書形+始末だ」です。
読解で出てきたときは、「何が悪い流れとして続いていたのか」「最後にどんな困った結果になったのか」を見ると、文の意味がつかみやすくなります。
「始末だ」は、文章の中で話し手の評価を強く示す大切な表現です。
意味だけを「結果だ」と覚えるのではなく、「悪い流れの末に、こんな困った結果になった」という感覚で理解しましょう。
日本語の文型は、意味だけでなく、文の流れや話し手の気持ちまで見ると、ぐっと理解しやすくなります。
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