日本語を勉強していると、どちらも「何かをしようと思っている」という意味に見える表現があります。
その代表が、「ようとする」と「つもりだ」です。
たとえば、次の二つの文を見てください。
「家を出ようとしたとき、電話が鳴った。」
「明日は朝早く家を出るつもりだ。」
どちらも「家を出る」という行動に関係しています。
しかし、文が見ているポイントは同じではありません。
一つ目は、まさに行動を始める直前の場面です。
二つ目は、これから行う予定や意志を述べています。
JLPTの文法問題や読解では、この時間感覚の違いを見抜くことが重要です。
まず結論
「ようとする」は、行動を始めようとする動きに注目する表現です。
「つもりだ」は、本人が心の中で持っている意志や予定に注目する表現です。
短く整理すると、次のようになります。
- 「ようとする」:行動に移ろうとする
- 「つもりだ」:そうすると決めている、または予定している
この違いを理解すると、似た選択肢が並んでも迷いにくくなります。
「ようとする」は、行動直前の動きを表す
「ようとする」は、動詞の意向形に「とする」を付けた形です。
- 食べる → 食べようとする
- 行く → 行こうとする
- 帰る → 帰ろうとする
- 開ける → 開けようとする
- 勉強する → 勉強しようとする
この表現は、何かを実際に始めようとする場面でよく使われます。
行動の直前を表す例
「電車に乗ろうとしたとき、ドアが閉まった。」
この文では、話し手は電車に乗る意志を持っていただけではありません。
実際に乗るために動き始めたところで、ドアが閉まったのです。
「ようとしたとき」は、何かが起きる直前の場面を描くときによく使われます。
試みたが、成功しなかった場合にも使う
「窓を開けようとしたが、動かなかった。」
この場合は、窓を開けるために実際に動作を始めています。
しかし、結果として窓は開きませんでした。
つまり、「ようとする」には、「実際にやってみる」「試みる」という意味が出ることもあります。
「つもりだ」は、本人の意志や予定を表す
「つもりだ」は、動詞の辞書形や「ない形」に付けて使います。
- 行くつもりだ
- 勉強するつもりだ
- 買わないつもりだ
- 遅刻しないつもりだ
この表現が表すのは、話し手の意志、計画、予定です。
将来の予定を述べる例
「来年、日本へ留学するつもりだ。」
この文では、留学のために今すぐ行動を始めているとは限りません。
大切なのは、「本人が留学しようと考えている」という点です。
否定の意志にも使える
「今日は甘いものを食べないつもりだ。」
この文は、「食べない」と決めていることを表します。
「つもりだ」は、行動をする場合だけでなく、行動をしないと決めている場合にも使えます。
二つの違いを例文で比べる
例1:家を出る
「家を出ようとしたとき、雨が降り始めた。」
この文では、すでに玄関へ向かう、靴を履く、ドアを開けるなど、家を出るための動きが始まっています。
一方で、
「明日は7時に家を出るつもりだ。」
この文は、明日の予定を述べています。
まだ実際に家を出る動作は始まっていません。
例2:質問する
「先生に質問しようとしたが、授業が終わってしまった。」
この文では、質問するために声をかけようとしたところで、機会を失っています。
一方で、
「授業のあとで先生に質問するつもりだ。」
この文は、これから質問する予定を表しています。
例3:ドアを開ける
「ドアを開けようとしたが、鍵がかかっていた。」
この文では、実際にドアを開ける動作を試みています。
一方で、
「荷物を取ったら、ドアを開けるつもりだ。」
この文では、ドアを開ける予定を述べています。
JLPTで迷わないための見分け方
文法問題で迷ったときは、「意志があるか」だけで考えないことが大切です。
「ようとする」にも、「つもりだ」にも、本人の意志が関係することがあります。
見るべきなのは、行動がどの段階にあるかです。
「ようとする」を選びやすいサイン
次のような語句がある場合は、行動直前の場面を表す「ようとする」が使われやすくなります。
- 「とき」
- 「ところ」
- 「その瞬間」
- 「が」
- 「けれど」
- 「突然」
- 「ちょうど」
たとえば、
「寝ようとしたとき、友達から電話がかかってきた。」
「席を立とうとしたが、先生に呼び止められた。」
このような文では、ある行動を始めようとした瞬間に、別の出来事が起きています。
「つもりだ」を選びやすいサイン
次のような語句がある場合は、予定や意志を表す「つもりだ」が使われやすくなります。
- 「来年」
- 「卒業後」
- 「明日」
- 「これから」
- 「予定」
- 「決めている」
- 「将来」
たとえば、
「卒業後は、日本で働くつもりだ。」
「明日から毎日30分ずつ勉強するつもりだ。」
このような文では、本人がこれから何をするかを述べています。
「ようとしている」にも注目する
「ようとする」は、「ようとしている」という形でもよく使われます。
「電車が出発しようとしている。」
この文は、電車がまもなく出発する状態を表しています。
「子どもが一人で靴を履こうとしている。」
この文では、子どもが実際に靴を履くことに挑戦しています。
つまり、「ようとしている」は、次の二つの意味で使われます。
- まもなく何かが起こる
- 実際に何かをしようと努力している
文脈を見ながら判断しましょう。
「ようとしない」は、行動しようとする姿勢がない
否定形の「ようとしない」も、JLPTでよく見かけます。
「彼は自分の間違いを認めようとしない。」
これは、単に「認めない予定だ」という意味ではありません。
本人に、認めるための姿勢や努力が見られないことを表しています。
「子どもが野菜を食べようとしない。」
この場合も、野菜を食べる動作を始めようとしないという意味です。
「ないつもりだ」とは、意味が異なります。
「今日は野菜を食べないつもりだ。」
こちらは、本人が食べないと決めていることを表します。
読解では、時間の流れを追う
読解問題で「ようとする」が出てきたら、動作の前後を確認してください。
たとえば、
駅を出ようとしたとき、後ろから名前を呼ばれた。振り返ると、大学時代の友人が立っていた。
この文章では、駅を出る動作の直前に、別の出来事が起きています。
「ようとしたとき」は、場面が切り替わる合図として働いています。
一方で、
大学を卒業したら、しばらく海外で働くつもりだ。そのために、今は英語を勉強している。
この文章では、将来の計画が述べられています。
「つもりだ」の後ろには、その計画に向けた準備や理由が続くこともあります。
よくある間違い
間違い1:「ようとする」は、単なる予定ではない
「来年、日本へ留学しようとしている。」
この文も文法的には使えますが、「留学のための準備を進めている」「実現に向けて動いている」というニュアンスが出やすくなります。
単に本人の予定を述べたい場合は、
「来年、日本へ留学するつもりだ。」
のほうが自然です。
間違い2:「つもりだ」は、行動直前を強調しない
「寝るつもりだったとき、電話が鳴った。」
意味は理解できますが、まさに寝ようと動き始めた瞬間を表したい場合は、
「寝ようとしたとき、電話が鳴った。」
のほうが自然です。
間違い3:英語の「intend」だけで覚えない
「ようとする」を「intend to do」、「つもりだ」を「plan to do」とだけ覚えると、細かい違いを見落としやすくなります。
日本語では、本人の考えだけでなく、行動が始まっているかどうかが重要です。
ミニクイズ
次の文の( )に入る、より自然な表現を考えてみましょう。
問題1
家を出( )としたとき、宅配便が届いた。
- よう
- るつもりだ
答え:
「家を出ようとしたとき、宅配便が届いた。」
行動を始めようとした瞬間に、別の出来事が起きています。
問題2
来月から、毎日日本語のニュースを読む( )。
- ようとした
- つもりだ
答え:
「来月から、毎日日本語のニュースを読むつもりだ。」
これから始める予定や意志を表しています。
問題3
彼は何度説明しても、自分の考えを変え( )。
- ようとしない
- ないつもりだ
答え:
「彼は何度説明しても、自分の考えを変えようとしない。」
変えるための姿勢が見られないことを表しています。
関連する推量・判断表現をまとめて確認したい場合は、「JLPTで迷いやすい推量・判断表現まとめ」も参考になります。
否定表現全体の違いを整理したい場合は、「JLPTで迷いやすい否定表現まとめ」も参考になります。
まとめ
「ようとする」と「つもりだ」は、どちらも意志と関係があります。
しかし、注目しているポイントは異なります。
- 「ようとする」は、行動に移ろうとする瞬間や、実際の試みを表す
- 「つもりだ」は、本人が持っている意志や予定を表す
- 「ようとしたとき」は、別の出来事が起きる直前の場面でよく使う
- 「ようとしない」は、行動しようとする姿勢が見られないことを表す
- 「つもりだ」は、将来の計画や決意を述べるときに使いやすい
JLPTでは、単語の意味だけを追うのではなく、行動が始まる前なのか、すでに動き始めているのかを意識して読んでみてください。
文法の違いが少しずつ見えるようになると、読解の文章も、選択肢の細かな差も、驚くほど読みやすくなります。
似た表現を、問題を解きながら身につけよう
文法の解説を読んで理解したつもりでも、実際の問題では迷ってしまうことがあります。
大切なのは、似た表現を比べながら、文脈の中で何度も判断することです。
RJT(Rapid Japanese Training)では、JLPT対策の語彙・文法・読解・聴解問題に取り組みながら、自分の弱点を確認できます。
「意味は分かるのに、なぜか正解を選べない」という悩みを、少しずつ減らしていきましょう。