導入
「目的」と「目標」は、どちらも何かを目指すときに使う言葉です。
そのため、日本語学習者の中には、次のように迷う人も多いでしょう。
日本語を勉強する目的は、JLPT N2に合格することです。
この文は間違いではありません。しかし、話したい内容によっては、「目的」と「目標」を分けたほうが、より自然で分かりやすい日本語になります。
簡単に言うと、「目的」は何のためにするのかを表し、「目標」はどこまで達成したいのかを表します。
ただし、辞書の意味だけを覚えても、実際の会話や文章では迷ってしまいます。
大切なのは、言葉だけではなく、使われる場面と一緒に覚えることです。
この記事では、日常会話、学校、仕事、文章、JLPT読解などの場面から、「目的」と「目標」の違いを見ていきましょう。
まず場面で考えてみよう
会社で新しいプロジェクトが始まり、上司が次のように説明しています。
このプロジェクトの目的は、利用者がもっと簡単にサービスを使えるようにすることです。
続いて、上司はこう言いました。
まずは、3か月以内に利用者を1,000人増やすことを目標にしましょう。
この場面では、「目的」と「目標」の役割がはっきり分かれています。
「利用者が簡単にサービスを使えるようにする」は、プロジェクトを行う理由や大きな方向です。そのため、「目的」を使います。
一方、「3か月以内に利用者を1,000人増やす」は、具体的に達成したい結果です。そのため、「目標」を使います。
つまり、目的は「何のために進むのか」、目標は「どこまで進むのか」を示します。
目的という大きなゴールに向かう途中に、具体的な目標が置かれていると考えると分かりやすいでしょう。
場面1:日常会話で使うなら
日常会話では、「目的」も「目標」もよく使われます。ただし、話している内容が違います。
行動の理由を聞くときは、「目的」が自然です。
A:今回、日本へ行く目的は何ですか。
B:日本の大学を見学するためです。
ここでは、「なぜ日本へ行くのか」を聞いています。そのため、「目的」を使います。
一方、これから達成したいことについて話すときは、「目標」が自然です。
A:今年の目標は何ですか。
B:毎日30分、日本語を勉強することです。
この会話では、「今年、何を達成したいか」を話しています。
「今年の目的は何ですか」と言うと、少し不自然です。「今年」という期間の中で達成したいことを聞いているため、「目標」が合います。
日常会話では、次のように考えると使い分けやすくなります。
- 「なぜするの?」と聞きたいときは「目的」
- 「何を達成したいの?」と聞きたいときは「目標」
ただし、「旅行の目的」「訪問の目的」のように、特定の行動の理由を説明するときは、日常会話でも「目的」がよく使われます。
場面2:文章やニュースで使うなら
文章、ニュース、会社の資料、学校の説明文では、「目的」と「目標」の両方がよく使われます。
文章では、それぞれの言葉が示している範囲に注目する必要があります。
「目的」は、活動や制度が存在する理由を説明するときによく使われます。
この制度は、子育てをする家庭の負担を減らすことを目的としています。
ここでは、制度を作った理由や大きな方針が説明されています。
一方、「目標」は、数字、期間、到達点などを示すときによく使われます。
政府は、2030年までに二酸化炭素の排出量を大幅に減らすという目標を発表しました。
「2030年までに」という期限や、「排出量を減らす」という到達点が示されているため、「目標」が自然です。
ニュースや説明文では、次の表現もよく使われます。
- ~を目的とする
- ~を目的として行う
- ~という目標を立てる
- 目標を達成する
- 目標に届く
- 目標を上回る
JLPTの読解問題では、「目的」は文章全体の理由や筆者の意図を理解する手がかりになります。
「目標」は、計画の具体的な到達点や、成功したかどうかを判断する基準になることが多いです。
場面3:感情や評価が入るなら
自分の希望や決意を話す場面では、「目標」がよく使われます。
私の目標は、日本語を使って仕事をすることです。
この文からは、「将来、これを実現したい」という話し手の意志が感じられます。
次の試験では、90点を取ることを目標にしています。
この文にも、話し手の努力や決意が含まれています。
一方、「目的」は、気持ちよりも「何のために行うのか」を説明する印象が強い言葉です。
私が日本語を勉強する目的は、日本の会社で働くためです。
この文は、日本語を勉強する理由を説明しています。
「日本の会社で働くこと」は、「目標」として表すこともできます。
私の目標は、日本の会社で働くことです。
このように、同じ内容でも、注目する部分によって言葉が変わります。
「目的」と言うと、「日本語を勉強するのは何のためか」という理由に注目しています。
「目標」と言うと、「将来、何を実現したいか」という到達点に注目しています。
つまり、どちらが正しいかだけではなく、話し手が何を伝えたいかが重要です。
2つの語の違いを整理
「目的」と「目標」の違いを短く整理しましょう。
- 「目的」は、行動や活動を行う理由を表します。
- 「目的」は、「何のためにするのか」という大きな方向を示します。
- 「目標」は、これから達成したい具体的な結果を表します。
- 「目標」には、数字、期限、回数、レベルなどが付くことがあります。
- 一つの目的を実現するために、複数の目標を立てることがあります。
例えば、日本語学習については、次のように整理できます。
目的は、日本語を使って日本人と自由に交流することです。
その目的を実現するために、次のような目標を立てます。
- 今年中にJLPT N2に合格する
- 毎日30分勉強する
- 1か月に漢字を100字覚える
- 週に1回、日本語で会話する
「目的」は進む方向を決め、「目標」はそこへ進むための具体的な到達点を決める言葉です。
例文で確認
旅行の理由を説明する
今回の旅行の目的は、京都の寺を見学することです。
「なぜ旅行するのか」を説明しているため、「目的」が自然です。
学習の到達点を決める
今学期の目標は、漢字を500字覚えることです。
期間と具体的な学習量が示されているため、「目標」が自然です。
会社の活動理由を説明する
この研修は、社員の接客能力を高めることを目的としています。
研修を行う理由や方針を説明する、少しかたい文章です。会社や学校の説明文でよく使われます。
数字を使って達成点を示す
今月は、売上を先月より10パーセント増やすことを目標にしています。
具体的な数字があるため、「目標」が自然です。仕事の計画や報告でよく使われます。
行動の本当の理由を尋ねる
あなたがここへ来た本当の目的は何ですか。
相手の行動の理由を確認する場面です。言い方によっては、相手を疑っているような強い印象を与えることがあります。
将来の希望を表す
将来の目標は、自分の会社を作ることです。
将来実現したいことを話しているため、「目標」が自然です。面接や自己紹介でも使えます。
目的と目標を同時に使う
健康を守ることを目的として、毎日8,000歩歩くことを目標にしています。
「健康を守る」は大きな理由で、「毎日8,000歩歩く」は具体的な到達点です。
このように、一つの文の中で両方を使うと、違いがよく分かります。
JLPT読解での見方
JLPTの読解文で「目的」が出てきたら、その活動や制度が「何のために行われているのか」を考えましょう。
例えば、次のような文があったとします。
地域の交流を深めることを目的として、毎月イベントが開かれている。
この文では、「イベントを開くこと」が中心ではありません。
重要なのは、「地域の交流を深める」というイベントの目的です。
問題で「イベントが行われる理由は何か」と聞かれた場合、この部分が答えになります。
一方、「目標」が出てきたら、具体的に何を達成しようとしているのかを確認します。
市は、年間の観光客数を100万人に増やすことを目標としている。
ここでは、「100万人」が具体的な到達点です。
読解問題では、「目的」と「目標」の言葉だけを見るのではなく、前後の文脈も確認してください。
特に、次の点に注目すると理解しやすくなります。
- 行動の理由が説明されているか
- 将来の到達点が示されているか
- 数字や期限が書かれているか
- 制度や活動の大きな方針が説明されているか
- その結果を達成できたかどうかが書かれているか
「目的」は理由や方向を示し、「目標」は達成を判断する基準を示すことが多いと覚えておきましょう。
まとめ
「目的」と「目標」は、どちらもゴールに関係する言葉ですが、注目する部分が違います。
- 「目的」は、何のために行うのかを表します。
- 「目標」は、何をどこまで達成したいのかを表します。
- 「目的」は大きな方向を示します。
- 「目標」は具体的な到達点を示します。
- 一つの目的を実現するために、複数の目標を立てることができます。
迷ったときは、次の二つの質問に置き換えてみてください。
何のためにするのですか。
この質問に答える言葉が「目的」です。
何を達成したいのですか。
この質問に答える言葉が「目標」です。
単語の意味を覚えるだけでは、読解や会話で自然に使えるようにはなりません。実際の場面や文脈の中で、どの言葉が選ばれているかを繰り返し確認することが大切です。
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