日本語には、「絶対にそうだ」と言い切らず、少し余白を残して話す表現がたくさんあります。
たとえば、次の二つです。
「成功するとは限らない」
「失敗しないとも限らない」
どちらも、はっきり断定しない表現です。
しかし、この二つは同じ意味ではありません。
「とは限らない」は、「必ずそうだとは言えない」と考えを弱める表現です。
一方、「ないとも限らない」は、「そうなる可能性も少しはある」と、可能性を残す表現です。
この記事では、「とは限らない」と「ないとも限らない」の違いを、例文を使いながらわかりやすく整理します。
まず結論
「とは限らない」は、相手が思っていそうなことを否定します。
「ないとも限らない」は、可能性が低そうなことを完全には否定しません。
つまり、中心になる考え方は次のように違います。
「とは限らない」
→ 必ずそうだ、とは言えない
「ないとも限らない」
→ そうならないとは言い切れない
少し似ていますが、話し手の見ている方向が違います。
「とは限らない」の意味
「とは限らない」は、「必ずそうだとは言えない」「いつもそうだとは言えない」という意味です。
一般的な考え、相手の思い込み、よくある判断に対して、「でも例外もある」と言いたいときに使います。
例文
高いレストランがおいしいとは限らない。
この文は、「高いレストランはおいしい」という考えに対して、「必ずそうではない」と言っています。
ほかにも、次のように使えます。
有名な学校を出た人が、必ず仕事ができるとは限らない。
日本語が上手な人でも、敬語が得意とは限らない。
毎日勉強しているからといって、すぐに成績が上がるとは限らない。
ここで大切なのは、「完全否定」ではないということです。
「高いレストランはおいしくない」と言っているわけではありません。
「高いレストランがおいしい場合もある。でも、必ずそうだとは言えない」と言っています。
「ないとも限らない」の意味
「ないとも限らない」は、「そうならないとは言い切れない」「可能性は低いかもしれないが、ゼロではない」という意味です。
多くの場合、「起こらないだろう」と思われることについて、「でも起こる可能性もある」と言いたいときに使います。
例文
明日は雨が降らないとも限らない。
この文は、「明日は雨が降らないだろう」と思っている状況で、「でも、雨が降る可能性もある」と言っています。
ほかにも、次のように使えます。
彼が急に考えを変えないとも限らない。
簡単な問題でも、ミスしないとも限らない。
このまま放っておくと、問題が大きくならないとも限らない。
「ないとも限らない」は、やや慎重な言い方です。
「たぶん大丈夫だと思う。でも、そうならない可能性もある」と、リスクや例外を意識している表現です。
二つの違いを比べる
次の二つを比べてみましょう。
彼が来るとは限らない。
彼が来ないとも限らない。
一見、似ているように見えますが、意味の方向が違います。
「彼が来るとは限らない」は、「彼が来る」と決まっているわけではない、という意味です。
つまり、「来ない可能性がある」と言っています。
一方、「彼が来ないとも限らない」は、「彼は来ないだろう」と思っているけれど、「来る可能性もある」と言っています。
整理すると、こうなります。
彼が来るとは限らない。
→ 来ると決まっているわけではない。
→ 来ない可能性がある。
彼が来ないとも限らない。
→ 来ないとは言い切れない。
→ 来る可能性がある。
見ている可能性が逆になっているのです。
「とは限らない」は思い込みを弱める
「とは限らない」は、一般化しすぎた考えを弱めるときによく使います。
たとえば、次のような考えです。
若い人は新しい技術に強い。
都会の生活は便利だ。
努力すれば必ず成功する。
これらに対して、「必ずそうとは言えない」と言いたいときに、「とは限らない」が使えます。
若い人がみんな新しい技術に強いとは限らない。
都会の生活が必ず便利だとは限らない。
努力すれば必ず成功するとは限らない。
この表現は、文章を少し冷静にします。
断定を避け、例外や現実の複雑さを示すことができます。
「ないとも限らない」は可能性を残す
「ないとも限らない」は、完全には否定できない可能性を残す表現です。
特に、注意・警戒・予測の場面でよく使われます。
たとえば、次のような場面です。
今は小さなトラブルでも、後で大きな問題にならないとも限らない。
簡単な作業でも、確認しなければミスしないとも限らない。
体調がよくても、無理をすれば悪化しないとも限らない。
この表現には、「可能性は高くないかもしれないが、注意したほうがいい」というニュアンスがあります。
そのため、少し慎重で、やや硬い印象があります。
よくある間違い
学習者が混乱しやすいのは、「ない」が入っているかどうかだけで判断してしまうことです。
しかし、「ないとも限らない」は、単に「とは限らない」の否定形ではありません。
次の二つは、意味が反対方向になります。
合格するとは限らない。
→ 合格しない可能性がある。
合格しないとも限らない。
→ 合格する可能性がある。
このように、「何の可能性を残しているのか」を考えることが大切です。
会話での使い方
日常会話では、「とは限らない」のほうが使いやすいです。
A: 高い教材を買えば、日本語が上手になりますか。
B: 高い教材がいいとは限りません。自分に合うかどうかが大事です。
一方、「ないとも限らない」は少し硬めで、注意や予測を含む場面に向いています。
A: このくらいのミスなら、大きな問題にはなりませんよね。
B: そうとも言えません。このままにしておくと、あとで問題にならないとも限りません。
自然な会話では、「ないとも限らない」はやや慎重な響きになります。
強く断定したくないけれど、相手に注意してほしいときに便利です。
JLPTでの見分け方
JLPTの文法問題では、前後の文脈を見ることが大切です。
「みんなそうだ」「必ずそうだ」という考えを否定する文なら、「とは限らない」が合いやすいです。
例:
有名な大学を出た人が、仕事で必ず成功する( )。
答え:
とは限らない
一方、「そうならないと思うが、可能性はゼロではない」という文なら、「ないとも限らない」が合いやすいです。
例:
今は小さな問題でも、将来大きなトラブルになら( )。
答え:
ないとも限らない
ポイントは、「何を否定しているのか」ではなく、「どの可能性を残しているのか」を見ることです。
まとめ
「とは限らない」と「ないとも限らない」は、どちらも断定を避ける表現です。
しかし、意味の方向は違います。
「とは限らない」は、「必ずそうだとは言えない」という意味です。
一般的な考えや思い込みを弱めるときに使います。
「ないとも限らない」は、「そうならないとは言い切れない」という意味です。
低そうに見える可能性を、完全には消さずに残すときに使います。
迷ったときは、次のように考えると整理しやすくなります。
「Aとは限らない」
→ Aだと決めつけない
「Aないとも限らない」
→ Aないとは言い切れない
日本語の文法は、形が似ていても、話し手の見ている方向が違うことがあります。
その違いがわかると、読解でも会話でも、文のニュアンスをより正確につかめるようになります。
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