日本語学習者がよくつまずく表現の一つに、「によって」と「によっては」があります。
見た目はほとんど同じです。
しかも、どちらも「場合による」「条件しだい」という意味で出てくることがあるため、違いが見えにくくなります。
たとえば、
国によって習慣が違います。
人によっては、この料理は辛すぎるでしょう。
この二つは、どちらも「条件が変われば結果も変わる」という話をしています。
でも、同じではありません。
違いをひとことで言うなら、こうです。
「によって」は、条件ごとの違いをそのまま広く述べる言い方。
「によっては」は、その中の一部を取り出して、例外や特別な場合に目を向ける言い方です。
この感覚がつかめると、文章の意味が一気に読みやすくなります。
まずは「によって」の感覚をつかむ
「によって」は、とても広く使われる表現ですが、今回のテーマでは特に「条件による違い」を表す使い方に注目します。
この用法の「によって」は、「何が基準になるかで、結果が変わる」という意味です。
つまり、条件ごとの違いを全体的に述べる言い方です。
たとえば、次のように使います。
国によって食事のマナーは違います。
先生によって教え方が違います。
季節によって景色が変わります。
ここでは、「国が違えば違う」「先生が違えば違う」「季節が違えば違う」というように、条件ごとの差を全体として説明しています。
特に「例外」や「一部の特別な場合」を強調しているわけではありません。
あくまで、条件の違いに応じて結果が変わる、とフラットに述べているのです。
「によっては」は一部のケースに注目する
一方の「によっては」は、「いろいろある中には、こういう場合もある」というニュアンスを持ちます。
つまり、全体の中の一部に注目しながら、特別な場合や例外的なケースを取り上げる表現です。
たとえば、次のように言います。
人によっては、この映画を難しいと感じるかもしれません。
場所によっては、まだ雪が残っています。
薬によっては、副作用が出ることがあります。
ここで言いたいのは、「全員がそうだ」「全部がそうだ」ではありません。
そうなるケースもある、と一部に目を向けています。
この「中にはそういう場合もある」という感覚が、「によっては」の大切なポイントです。
いちばん分かりやすい違いは「全体」か「一部」か
この二つの違いを整理すると、次のようになります。
「によって」
条件ごとに結果が違うことを、全体として述べる。
「によっては」
条件ごとの違いの中でも、一部のケースに注目して述べる。
たとえば、
店によって値段が違います。
店によっては、クレジットカードが使えません。
最初の文は、店ごとに値段が違うという全体的な傾向を言っています。
二つ目の文は、全部ではないけれど、一部の店ではクレジットカードが使えない、と言っています。
この差はとても重要です。
「によっては」には注意や警告の響きが出やすい
「によっては」は、特別な場合を取り上げるため、文によっては注意や警告のような響きが出やすくなります。
たとえば、
地域によっては、大雨のおそれがあります。
人によっては、この表現を失礼だと感じることがあります。
体調によっては、無理をしないほうがいいです。
どれも、「そうではない場合もあるけれど、そうなるケースもあるので気をつけてください」という含みがあります。
そのため、「によっては」は案内文、説明文、ニュース、日本語教育の例文でも非常によく使われます。
学習者が混同しやすい理由
この二つが難しいのは、どちらも「条件によって変わる」という意味を持っているからです。
しかし、焦点の置き方が違います。
「によって」は、違いそのものを並べて見せる表現です。
「によっては」は、その違いの中から一部のケースを取り出して見せる表現です。
たとえば、
文化によって考え方が違います。
文化によっては、その質問は失礼に聞こえます。
前の文は、文化ごとに考え方が違うという一般的な話です。
後ろの文は、文化の中には、その質問を失礼だと受け取るものもある、という話です。
つまり、「違いの説明」なのか、「一部への注意」なのかで、自然な表現が変わるのです。
こんなときは「によって」が自然
全体的な違い、分類、傾向を述べたいときは、「によって」が自然です。
国によって教育制度は異なります。
人によって考え方はさまざまです。
時間帯によって電車の混み方が違います。
これらは、条件ごとの差を広く説明しています。
どこか一部だけを強く取り出しているわけではありません。
こんなときは「によっては」が自然
一部のケース、例外、注意点を伝えたいときは、「によっては」が自然です。
人によっては、この音が気になるかもしれません。
地域によっては、この言い方を使いません。
場合によっては、予定が変更になることがあります。
ここでは、「全部ではないが、そういう場合もある」という含みがはっきりしています。
一文で覚えるコツ
迷ったときは、次のように考えると分かりやすくなります。
違いを広く述べるなら「によって」。
その中の一部を取り出して言うなら「によっては」。
この区別ができるようになると、説明文も会話もかなり自然になります。
まとめ
「によって」と「によっては」は、とてもよく似ています。
けれども、見ている範囲が違います。
「によって」は、条件ごとの違いを全体として見る表現。
「によっては」は、その中の一部や例外に目を向ける表現。
この違いを理解すると、日本語の説明文や注意書きがずっと読みやすくなります。
似た表現ほど、意味そのものだけでなく、どこに焦点を当てているかを見ることが大切です。
RJTでは、このような紛らわしい文法の違いも、例文と問題演習を通して分かりやすく整理しながら学べます。
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