日本語の文章を読んでいると、文末に「ことか」や「だろう」が使われている文に出会うことがあります。
たとえば、次の二つの文を見てください。
「合格の知らせを聞いて、彼はどれほどうれしかったことか。」
「試験が終わったので、彼も安心しただろう。」
どちらも、話し手が相手の気持ちを想像しているように見えます。
しかし、二つの文が伝えているものは同じではありません。
「ことか」は、強い感情を表す表現です。
一方、「だろう」は、ある情報をもとに判断する推量の表現です。
この違いを理解すると、JLPTの文法問題だけでなく、読解問題でも書き手の気持ちを正確につかみやすくなります。
まず結論:「ことか」は感嘆、「だろう」は推量
最初に、基本的な違いを整理しましょう。
- 「ことか」:感情の大きさを強調する
- 「だろう」:確実ではないことを推測する
「ことか」を使うとき、話し手が最も伝えたいのは「どれほど強く感じたか」です。
「だろう」を使うとき、話し手が最も伝えたいのは「おそらくそうだと考えられる」という判断です。
「ことか」とは?感情の大きさを表す表現
「ことか」は、驚き、喜び、悲しみ、苦労、安心などの感情が非常に大きいことを表します。
疑問の形に見えますが、本当に答えを求めているわけではありません。
基本の形
- どれほど + 普通形 + ことか
- どんなに + 普通形 + ことか
- 何度 + 普通形 + ことか
- 何回 + 普通形 + ことか
- どれだけ + 普通形 + ことか
例文
「日本語で自然に話せるようになるまで、どれほど練習したことか。」
この文は、練習量を客観的に数えているのではありません。
「本当にたくさん練習した」という強い実感を表しています。
「遠く離れた家族に会える日を、どんなに待っていたことか。」
この文では、待ち続けていた気持ちの強さが表現されています。
「大切な書類をなくして、何度探したことか。」
この文からは、何度も繰り返し探した苦労や焦りが伝わります。
「ことか」のポイント
「ことか」は、単なる事実説明ではありません。
書き手や話し手の心が動いている文です。
読解問題で「ことか」が出てきたら、まず感情に注目してください。
「だろう」とは?根拠をもとに推測する表現
「だろう」は、話し手が「おそらくそうだ」と考えていることを表します。
断定はできないけれど、状況や知識から考えると、その可能性が高いという意味です。
基本の形
- 動詞普通形 + だろう
- い形容詞普通形 + だろう
- な形容詞語幹 + だろう
- 名詞 + だろう
丁寧な言い方では、「でしょう」を使います。
例文
「空が暗くなってきた。もうすぐ雨が降るだろう。」
空の様子を見て、雨が降ると予測しています。
「彼は毎日遅くまで練習していたから、きっと試合に勝ちたいのだろう。」
彼の行動を根拠にして、気持ちを推測しています。
「この時間なら、駅の周りは混んでいるだろう。」
時間帯から考えて、駅周辺の状況を推測しています。
「だろう」のポイント
「だろう」が表すのは、感情の強さではありません。
重要なのは、話し手の判断や予測です。
読解問題では、「何を根拠に推測しているか」を確認しましょう。
迷いやすいポイント:「だろう」にも感情が感じられることがある
ここが最も重要なポイントです。
「だろう」は基本的に推量を表しますが、文によっては強い感情も感じられます。
たとえば、次の文を見てください。
「長い間努力して、ついに夢をかなえたのだから、どれほどうれしかっただろう。」
この文には、話し手の感動や共感も含まれています。
しかし、文法的な中心は推量です。
話し手は、その人の気持ちを直接経験したわけではありません。
状況から考えて、「きっとうれしかったはずだ」と想像しています。
一方、次の文ではどうでしょうか。
「長い間努力して、ついに夢をかなえたとき、どれほどうれしかったことか。」
こちらは、喜びの大きさそのものを強く表現しています。
事実を冷静に推測するというより、感情の深さを読者に印象づける文です。
「ことか」と「だろう」を比較してみよう
例1:合格の喜び
「合格通知を見たとき、どんなにうれしかったことか。」
感情の大きさを強調しています。
「長い間勉強していたから、合格通知を見てうれしかっただろう。」
状況をもとに、その人の気持ちを推測しています。
例2:家族との再会
「十年ぶりに家族と再会できたとき、どれほど安心したことか。」
再会できたときの安心感の強さを表しています。
「十年ぶりに家族と再会できたのだから、きっと安心しただろう。」
家族と再会したという情報から、気持ちを推測しています。
例3:苦労
「慣れない環境で生活するために、どれほど苦労したことか。」
経験した苦労の大きさを強調しています。
「慣れない環境での生活だから、苦労することも多いだろう。」
これから起こる可能性や一般的な状況を推測しています。
JLPT読解で迷わないための見分け方
選択肢の中に「ことか」と「だろう」があると、どちらも自然に見えることがあります。
そのときは、次の順番で考えてください。
1. 文の目的を確認する
その文は、感情を強く伝えたいのでしょうか。
それとも、状況から何かを予測しているのでしょうか。
- 感情を強調したい:ことか
- 判断や予測を示したい:だろう
2. 前後の文に根拠があるか確認する
「雨雲が近づいている」「毎日練習している」「連絡が来ない」など、推測の根拠が書かれている場合は、「だろう」が使われやすくなります。
3. 「どれほど」「どんなに」「何度」に注目する
これらの言葉がある場合、「ことか」が使われる可能性があります。
ただし、「どれほど大変だっただろう」のように、「だろう」と組み合わせることもできます。
最後は、感嘆なのか推量なのかを文脈から判断しましょう。
よくある間違い
間違い1:「ことか」を普通の疑問文として考える
「どれほど苦労したことか」は、「どのくらい苦労しましたか」と質問しているわけではありません。
「非常に苦労した」という感嘆を表しています。
間違い2:「だろう」を未来の予測だけだと考える
「だろう」は、未来だけでなく、現在や過去について推測するときにも使えます。
- 現在の推量:「彼は今ごろ家にいるだろう。」
- 過去の推量:「突然の知らせを聞いて、驚いただろう。」
- 未来の推量:「明日は気温が上がるだろう。」
間違い3:単語だけを見て判断する
「どれほど」があるから必ず「ことか」とは限りません。
「どれほど大変だったことか」と「どれほど大変だっただろう」は、どちらも成立します。
大切なのは、話し手が感情を強く表現しているのか、それとも他人の状況を想像しているのかを見極めることです。
さらに理解を深める:「ことだろう」との関係
日本語では、「ことか」と「だろう」が近い形で現れる場合もあります。
「家族はどれほど心配したことだろう。」
この「ことだろう」は、感嘆と推量の両方が重なった表現です。
「家族はきっと非常に心配したに違いない」という意味になります。
書き手は家族の心配を直接知っているとは限りません。
しかし、状況から想像すると、その心配は非常に大きかったはずだと感じています。
例文
「海外で一人暮らしを始めた子どもを見送る親は、どれほど寂しいことだろう。」
「長年努力してきた選手にとって、優勝はどれほどうれしいことだろう。」
このように、「ことだろう」は感情を含んだ推量として使われます。
関連する文法まとめ: JLPTで迷いやすい推量・判断表現まとめ
まとめ:「感情」か「判断」かを見極めよう
「ことか」と「だろう」の違いは、文末だけを見ても分かりません。
重要なのは、書き手が何を伝えたいのかを考えることです。
- 「ことか」:感情の強さを印象的に伝える
- 「だろう」:状況や根拠から推測する
- 「ことだろう」:感情の大きさを想像しながら推測する
JLPTの読解では、一つひとつの単語を理解するだけでは正解に届かないことがあります。
文末表現から書き手の気持ちや判断を読み取れるようになると、迷いやすい選択肢の違いが少しずつ見えるようになります。
「意味は分かるのに、なぜか正解を選べない」という悩みは、決して語彙力不足だけが原因ではありません。
必要なのは、似た表現を比較しながら、文脈の違いを見抜く練習です。
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毎日の短い練習を積み重ねて、JLPT本番で迷わず選べる力を身につけましょう。