日本語を勉強していると、見た目がよく似ているのに、意味はかなり違う表現に出会います。
その代表のひとつが、「ことがある」と「たことがある」です。
どちらも最後に「ことがある」が入っているので、初めて見ると同じように感じるかもしれません。
でも、実際には見ている時間の向きが違います。
「ことがある」は、今や普段の生活の中で、ときどき起こることを表します。
「たことがある」は、これまでの人生の中で一度でも経験したことがあるかを表します。
この違いがわかると、会話も読解もぐっと自然になります。
JLPTでもよく問われる重要なポイントなので、ここでしっかり整理しておきましょう。
「ことがある」とは?
「ことがある」は、あることがときどき起こる、そういう場合もある、という意味で使われます。
習慣というほどいつもではないけれど、ゼロではない。そんなニュアンスです。
形は、動詞の辞書形を使います。
動詞辞書形+ことがある
たとえば、次のような文です。
私は忙しいと、朝ごはんを食べないことがあります。
この駅では、電車が少し遅れることがあります。
週末は、友だちと映画を見ることがあります。
これらの文では、「朝ごはんを食べない」「電車が遅れる」「映画を見る」ということが、ときどき起こると述べています。
ポイントは、「一回だけの経験」ではなく、「そういうこともある」という一般的な話になっていることです。
つまり「ことがある」は、頻度は高くなくても、ある程度くり返し起こる可能性や習慣的な事実を表す文型です。
「たことがある」とは?
一方で「たことがある」は、今までにその経験をしたことがある、という意味です。
大事なのは、「何回したか」ではなく、「一度でも経験したかどうか」です。
形は、動詞のた形を使います。
動詞た形+ことがある
たとえば、次のような文です。
私は京都へ行ったことがあります。
この料理を食べたことがありますか。
子どものころ、富士山に登ったことがあります。
これらの文は、「京都へ行った」「この料理を食べた」「富士山に登った」という経験が、これまでに一度でもあったことを表しています。
つまり「たことがある」は、過去の経験に目を向ける表現です。
今ときどきしているかどうかではなく、これまでの人生の中で経験したかどうかがポイントになります。
ひとことで違いを言うと?
「ことがある」は、ときどきあること。
「たことがある」は、経験したことがあること。
このひとことを覚えるだけでも、かなり区別しやすくなります。
もっとシンプルに言えば、
「ことがある」
そういうこともある
「たことがある」
した経験がある
という違いです。
例文で比べてみよう
まずは、よく似た形の文を比べてみましょう。
私は週末にカフェで勉強することがあります。
私はあのカフェで勉強したことがあります。
一つ目は、「週末にカフェで勉強することがときどきある」という意味です。
今の生活の中で、そういうことが起こるのです。
二つ目は、「あのカフェで勉強した経験がある」という意味です。
回数は一回でもかまいません。
過去の経験を言っています。
もう一組見てみましょう。
この先生は、ときどき宿題を多く出すことがあります。
この先生の授業を受けたことがあります。
最初の文は、「宿題を多く出す」ということがときどき起こる、という意味です。
二つ目は、「授業を受けた経験がある」という意味です。
形は似ていますが、見ているものはまったく同じではありません。
学習者が間違えやすいポイント
日本語学習者がよく迷うのは、「ことがある」を見ると、何でも経験の意味だと思ってしまうことです。
でも、経験になるのは「たことがある」です。
たとえば、
私は日本へ行くことがあります。
これは文脈によっては「私は仕事などで日本へ行くことがときどきあります」という意味になります。
一方で、
私は日本へ行ったことがあります。
こちらは「日本へ行った経験があります」という意味です。
この二つは似ているようで、かなり違います。
前者は現在の生活や習慣に近い話で、後者は過去の経験です。
逆に、経験を言いたいのに辞書形を使ってしまうと、不自然になることがあります。
たとえば、
私はすしを食べることがあります。
これは「ときどきすしを食べます」という意味です。
経験を言いたいなら、
私はすしを食べたことがあります。
のほうが自然です。
つまり、辞書形か、た形かがとても大切なのです。
「ことがある」がよく使われる場面
「ことがある」は、日常の中で起こること、時々すること、そういう場合もあることを言いたいときによく使われます。
たとえば、
仕事が忙しい日は、昼ごはんを食べないことがあります。
この道は、夜になると暗くなることがあります。
日本語の勉強が楽しいと、時間を忘れることがあります。
こうした文では、「毎回ではないけれど、そういうこともある」という感じが自然に出ています。
「たことがある」がよく使われる場面
「たことがある」は、旅行、食べ物、体験、チャレンジ、学習経験などを話すときによく使われます。
たとえば、
北海道へ行ったことがあります。
納豆を食べたことがあります。
日本人の先生と話したことがあります。
JLPTを受けたことがあります。
どれも、「一度でも経験したかどうか」が中心です。
だから会話の中でも、「ありますか」と質問する形でとてもよく使われます。
例
日本へ行ったことがありますか。
この映画を見たことがありますか。
着物を着たことがありますか。
こうした質問は、経験をたずねるときの定番です。
JLPTではどう見分ける?
JLPTでは、辞書形が来るか、た形が来るかをきちんと見分けることが大切です。
経験を表したいなら、「たことがある」。
頻度や、ときどき起こることを表したいなら、「ことがある」。
たとえば、文の中に
今まで
一度
これまで
経験
旅行した
食べた
のような言葉があれば、「たことがある」が合いやすくなります。
一方で、
ときどき
たまに
場合によっては
忙しい日は
週末は
のような言葉があれば、「ことがある」が合いやすくなります。
つまり、前後の文脈を見ると、かなり判断しやすくなります。
覚え方のコツ
迷ったときは、自分にこう聞いてみてください。
それは、ときどき起こることですか。
それとも、これまでに経験したことですか。
ときどき起こるなら、「ことがある」。
経験なら、「たことがある」。
さらに、形で覚えるなら、
辞書形+ことがある
た形+ことがある
この二つをセットで覚えるのがおすすめです。
見た目が似ているからこそ、動詞の形に意識を向けると間違いにくくなります。
まとめ
「ことがある」と「たことがある」は、どちらもよく使う表現ですが、意味は同じではありません。
「ことがある」は、ときどき起こることや、そういう場合もあることを表します。
「たことがある」は、これまでに経験したことがあるかどうかを表します。
似ている表現ほど、違いをきちんと整理しておくことが大切です。
この違いがわかると、会話でも読解でも、文の意味をより正確につかめるようになります。
文法は、形だけを暗記するよりも、「どんな場面で使うのか」まで理解するとぐっと強くなります。
似ている文型をひとつずつ整理していくことが、JLPT対策でも自然な日本語力の向上でも、大きな力になります。
「ことがある」と「たことがある」のような、似ているけれど意味がずれる文法を、問題を解きながら実践的に身につけたい方は、RJTで学んでみてください。
文法の違いを感覚ではなく、使える知識として整理しながら、効率よくJLPT対策を進めることができます。
https://rapid-jt.com/