「はずがない」と「わけがない」の違いは?強い否定をどう使い分ける?

2026年06月08日(月) 06時42分42秒

更新: 2026年06月01日(月) 22時40分58秒

「はずがない」と「わけがない」の違いは?強い否定をどう使い分ける?

日本語を勉強していると、よく似た強い否定表現に出会います。

「はずがない」と「わけがない」も、その代表です。

たとえば、次の二つの文を見てください。

田中さんは、そんな簡単なミスをするはずがない。

田中さんは、そんな簡単なミスをするわけがない。

どちらも、「田中さんがミスをする可能性はない」という強い否定を表しています。

英語にすると、どちらも「There is no way ...」や「It cannot be ...」のように訳せることがあります。

では、何が違うのでしょうか。

JLPTの文法問題や読解問題では、単に「どちらも強い否定」と覚えるだけでは足りません。

重要なのは、話し手が何を根拠にして否定しているのかを見抜くことです。

まず結論

「はずがない」は、事実や状況から考えて、そうなる可能性はないと判断するときに使います。

一方、「わけがない」は、理由や常識、自分の強い確信から考えて、そんなことはありえないと否定するときに使います。

整理すると、次のようになります。

  • はずがない:状況や情報から考えると、論理的にありえない
  • わけがない:理由や常識から考えると、どう考えてもありえない

ただし、この二つは使える場面がかなり重なることがあります。

大切なのは、「必ずどちらか一方しか使えない」と考えることではありません。

文章の中で、どの部分に焦点が置かれているかを読むことです。

「はずがない」は、予想される結果を否定する

「はず」は、本来「当然そうなると予想されること」を表します。

たとえば、

電車は10時に到着するはずです。

この文では、時刻表などの情報から考えて、「10時に到着すると予想される」と言っています。

これを否定すると、

電車が9時に到着するはずがない。

となります。

時刻表では10時到着なのだから、9時に到着する可能性はない、と判断しているのです。

つまり、「はずがない」は、持っている情報や客観的な状況をもとにして、可能性を否定するときに使いやすい表現です。

例文

山田さんは今、海外にいる。今日の会議に出席できるはずがない。

山田さんが海外にいるという事実があるため、会議への出席は不可能だと判断しています。

この店は日曜日が定休日だ。今日、開いているはずがない。

定休日という情報にもとづいて、店が営業している可能性を否定しています。

彼は昨日から何も食べていない。元気なはずがない。

何も食べていないという状況から考えて、元気である可能性は低いと判断しています。

「わけがない」は、強い納得を伴って否定する

「わけ」は、理由や事情、道理を表す言葉です。

「わけがない」は、理由を考えれば、そんなことが成立する道理はないという意味になります。

話し手が強い確信を持って、「そんなことはありえない」と言うときに使われます。

例文

毎日一生懸命練習している彼が、簡単にあきらめるわけがない。

彼が毎日練習していることを知っているため、「簡単にあきらめるなんて、どう考えてもありえない」と強く否定しています。

そんな高価な車を、学生の私が買えるわけがない。

学生である自分の経済状況を考えれば、高価な車を買える道理はないと言っています。

あれほど慎重な人が、何も考えずに決めたわけがない。

その人の性格をよく知っているため、「何も考えていないはずはない」と強く判断しています。

「わけがない」には、話し手の強い納得感があります。

単に可能性が低いのではありません。

理由を考えれば、そんな結論にはならないという気持ちが含まれています。

同じ場面で比べると違いが見える

似た文を比べてみましょう。

例1:会社に来る可能性を否定する

田中さんは昨日入院した。今日、会社に来るはずがない。

入院したという客観的な状況から考えて、出社は不可能だと判断しています。

あれほど体調が悪かった田中さんが、無理をして会社に来るわけがない。

田中さんの体調や判断を考えれば、出社する道理はないと強く否定しています。

例2:試験に合格する可能性を否定する

彼は試験を受けていない。合格するはずがない。

試験を受けていないという事実があるため、合格は論理的に不可能です。

ほとんど勉強していない私が、満点を取れるわけがない。

自分の勉強量を考えれば、満点を取れる道理はないと強く否定しています。

読解問題では、直前の根拠に注目する

JLPTの読解問題では、「はずがない」と「わけがない」の違いを単独で問うだけではありません。

文章の流れの中で、筆者がどのような根拠を示しているかを読む必要があります。

「はずがない」を選びやすい場面

次のような情報が直前にある場合は、「はずがない」が自然になりやすいです。

  • 時間や日程
  • 規則や制度
  • 場所や距離
  • 客観的な事実
  • すでに確認された情報

「わけがない」を選びやすい場面

次のような要素がある場合は、「わけがない」が自然になりやすいです。

  • 人の性格や考え方
  • 話し手の強い確信
  • 常識から考えた判断
  • 「そんな」「いくらなんでも」などの強い言い方
  • 相手の意見を打ち消す流れ

たとえば、

彼はまだ一度も日本語を勉強したことがない。難しい漢字が読める___。

この場合、未学習という事実から可能性を否定しているので、

読めるはずがない。

が自然です。

一方、

毎日努力している彼が、こんな小さな失敗で夢をあきらめる___。

この場合、彼の性格や努力をよく知ったうえで強く否定しているので、

あきらめるわけがない。

が自然です。

「わけがない」は感情だけの表現ではない

ここで注意したいことがあります。

「わけがない」は強い確信を表しますが、必ずしも感情的な表現ではありません。

理由や常識にもとづいて、冷静に使うこともできます。

たとえば、

パスワードを知らない人が、本人の許可なくログインできるわけがない。

これは感情的な発言ではありません。

仕組みや条件を考えれば、ログインできる道理はないと言っています。

同じように、「はずがない」にも強い気持ちが込められることがあります。

私の友人が、そんなひどいことを言うはずがない。

この文では、友人への信頼が強く表れています。

つまり、単純に、

  • はずがない:冷静
  • わけがない:感情的

と覚えるのは危険です。

どちらに焦点があるのかを考えることが大切です。

接続の形も確認しよう

「はずがない」と「わけがない」は、動詞や形容詞、名詞の後ろにつけて使います。

動詞

彼が約束を忘れるはずがない。

彼が約束を忘れるわけがない。

い形容詞

この商品が、こんなに安いはずがない。

この商品が、こんなに安いわけがない。

な形容詞

試験が簡単なはずがない。

試験が簡単なわけがない。

名詞

あの人が学生のはずがない。

あの人が学生なわけがない。

名詞の後ろでは形が異なるので、注意してください。

「わけではない」と混同しない

「わけがない」と「わけではない」は、見た目が似ていますが、意味は大きく異なります。

わけがない

強い否定です。

彼がそんなことを言うわけがない。

意味:
彼がそんなことを言う可能性はない。

わけではない

全面否定を避ける表現です。

甘いものが嫌いなわけではない。

意味:
甘いものが嫌いということではない。ただし、特別に好きとも限らない。

「が」と「では」の違いだけで、意味が変わります。

選択肢を読むときは、助詞を丁寧に確認しましょう。

「はずではない」との違いにも注意

「はずがない」と「はずではない」も、同じ意味ではありません。

はずがない

可能性を強く否定します。

彼が犯人のはずがない。

意味:
彼が犯人である可能性はない。

はずではない

本来の予定や予想と違うことを表します。

電車は、まだ出発するはずではない。

意味:
予定では、まだ出発する時間ではない。

JLPTでは、このような細かな違いを見抜く力が必要です。

ミニ問題で確認しよう

次の空欄には、「はずがない」と「わけがない」のどちらが自然でしょうか。

問題1

この美術館は月曜日が休館日だ。今日、入れる___。

答え:

入れるはずがない。

休館日という客観的な情報があるためです。

問題2

家族を大切にしている彼が、理由もなく子どもの誕生日を忘れる___。

答え:

忘れるわけがない。

彼の性格や価値観を考えれば、忘れる道理はないと強く判断しています。

問題3

彼女はまだ出発していない。もう駅に着いている___。

答え:

着いているはずがない。

まだ出発していないという事実から考えて、到着は不可能です。

迷ったときの考え方

問題を解くときは、次の順番で考えてみてください。

  1. 直前に客観的な事実や条件が書かれているか確認する
  2. 話し手が強い確信を込めて否定しているか確認する
  3. 人の性格や常識を理由にしているか確認する
  4. 「わけではない」「はずではない」と混同していないか確認する

まずは、

  • 情報から予想を否定するなら「はずがない」
  • 理由や常識から強く否定するなら「わけがない」

という基本を押さえましょう。

そのうえで、文章全体の流れを読むことが大切です。

関連する文法まとめ: JLPTで迷いやすい推量・判断表現まとめ

否定表現全体の違いを整理したい場合は、JLPTで迷いやすい否定表現まとめも参考になります。

まとめ

「はずがない」と「わけがない」は、どちらも可能性を強く否定する表現です。

ただし、焦点は少し異なります。

  • はずがない:事実や状況から考えて、そうなる可能性はない
  • わけがない:理由や常識から考えて、そんなことが成立する道理はない

この違いがわかると、文法問題だけでなく、読解問題でも筆者の考え方を追いやすくなります。

JLPTでは、単語の意味を知っているだけでは正解できない問題があります。

大切なのは、「なぜこの表現が選ばれているのか」を考える習慣です。

RJT(Rapid Japanese Training)では、似た表現の違いを意識しながら、実際の問題を通して繰り返し練習できます。

読むだけで終わらせず、自分で選び、迷い、解説を確認する。

その積み重ねが、本番で迷わない力につながります。

似た文法を問題で練習して、JLPTの読解力を伸ばす


関連記事

「方法」と「手段」の違いは?やり方と目的達成の道具

2026年07月14日(火) 11時27分20秒

「方法」と「手段」の違いは?やり方と目的達成の道具

「方法」と「手段」はどちらも目的を達成するときに使いますが、焦点は「やり方」と「使うもの」で異なります。よくある誤用から自然な使い分け、JLPTでの見分け方まで分かりやすく解説します。