日本語を勉強していると、かなり早い段階で出会うのに、なかなか手ごわい表現があります。
それが「あげる」「くれる」「もらう」です。
どれも、物や行為のやり取りを表します。
でも、違いは単純な言い換えではありません。
ポイントはただ一つです。
だれの立場から見るか。
ここが見えていないと、
先生が本をくれました
私は先生に本をあげました
友だちが私は本をもらいました
のように、文の向きがぐらついてしまいます。
この記事では、「あげる」「くれる」「もらう」の違いを、視点のルールから例文まで、すっきり整理します。
「あげる」は、外へ出す視点
「あげる」は、だれかがほかの人に何かを与えるときに使います。
話し手は、与える側に近い視点で見ています。
基本の形はこうです。
A は B に 物 を あげる
例文を見てみましょう。
私は友だちにお土産をあげました。
母は弟に新しいかばんをあげました。
先生は学生にアドバイスをあげました。
このとき、文の中心にあるのは「与える側」です。
何かが、その人から外へ出ていくイメージです。
ただし注意したいのは、目上の人に対して「あげる」を使うと不自然になることがある点です。
私は先生にプレゼントをあげました。
文法的には作れますが、場面によっては少しぞんざいに聞こえることがあります。
そのため、実際には「あげました」より「差し上げました」を使うほうが自然なこともあります。
「くれる」は、こちらへ来る視点
「くれる」は、「相手が私や私の身内に何かを与える」ときに使います。
つまり、何かが話し手側へ入ってくる感覚です。
基本の形はこうです。
A は 私 に 物 を くれる
例文です。
友だちは私にお土産をくれました。
先生は私に丁寧なコメントをくれました。
祖母は妹に手紙をくれました。
ここで大切なのは、「くれる」は受け取る側が話し手寄りだということです。
「私」そのものだけでなく、「私の家族」「私の身内」など、話し手に近い人物も含まれます。
たとえば、
先生は弟に本をくれました。
この文が自然なのは、弟が話し手に近い存在だからです。
同じ場面でも、
先生は弟に本をあげました。
と言うと、先生側に立って説明している感じになります。
完全な間違いとは言えませんが、普通は「くれました」のほうが自然です。
「もらう」は、受け取る視点
「もらう」は、受け取る人を主語にして言う表現です。
つまり、中心にあるのは「何を受け取ったか」ではなく、「だれが受け取ったか」です。
基本の形はこうです。
A は B に 物 を もらう
例文を見ましょう。
私は友だちにお土産をもらいました。
弟は先生に本をもらいました。
彼女は母にネックレスをもらいました。
この表現では、与えた人ではなく、受け取った人が前に出ます。
「くれる」と似ていますが、焦点が違います。
友だちは私にお土産をくれました。
私は友だちにお土産をもらいました。
この二つは、場面としてはほぼ同じです。
でも、前者は「友だちがくれた」ことに目が向き、後者は「私がもらった」ことに目が向きます。
違いは「行為」ではなく「カメラの向き」
ここまで来ると、三つの違いはかなりクリアになります。
「あげる」は、与える側にカメラを向ける表現です。
「くれる」は、相手から話し手側へ来る流れを見る表現です。
「もらう」は、受け取る側にカメラを向ける表現です。
つまり、出来事が三つあるのではありません。
同じやり取りを、どこから見るかが違うのです。
次のセットで比べると、一気に理解しやすくなります。
私は妹にケーキをあげました。
妹は私にケーキをもらいました。
友だちは私にノートをくれました。
私は友だちにノートをもらいました。
このように、表現が変わっても、出来事そのものは同じです。
変わっているのは視点です。
行為をもらうときも使える
この三つは、物だけでなく行為にも使えます。
ここが日本語らしい面白いところです。
友だちが宿題を手伝ってくれました。
母に駅まで送ってもらいました。
私は後輩に資料をコピーしてあげました。
この場合もルールは同じです。
相手が私のためにしてくれたなら「くれる」
私がだれかにしてもらったなら「もらう」
私がだれかのためにしてあげたなら「あげる」
特に会話では、「~てくれる」「~てもらう」「~てあげる」の形が非常によく使われます。
学習者が混乱しやすいポイント
1つ目は、「くれる」の方向です。
「くれる」は、単に与えるではありません。
話し手側に向かって入ってくる必要があります。
だから、
私は友だちに本をくれました。
は不自然です。
自分が与えるなら、「あげました」です。
2つ目は、「もらう」の助詞です。
私は先生から本をもらいました。
私は先生に本をもらいました。
どちらも使えますが、教科書では「から」を先に学ぶことが多いです。
「に」も広く使われます。
3つ目は、身内の扱いです。
父は私に時計をくれました。
社長は弟に名刺をくれました。
このように、「私の側」の人に向かうなら「くれる」が自然になります。
ここでの感覚がつかめると、かなり上達します。
「あげる」と「くれる」と「もらう」を見分けるコツ
迷ったら、次の順番で考えると整理しやすいです。
まず、与えたのはだれか。
次に、受け取ったのはだれか。
最後に、その場面をだれの立場から言いたいか。
この三つを確認すると、かなりの確率で正しく選べます。
簡単に言えば、
与える側を主語にしたいなら「あげる」
相手が私側に与えたと言いたいなら「くれる」
受け取る側を主語にしたいなら「もらう」
です。
最後に
「あげる」「くれる」「もらう」は、単語の暗記だけではなかなか定着しません。
でも、「視点の違い」という一本のルールで見ると、急に見通しがよくなります。
日本語では、同じ出来事でも、だれに気持ちを寄せるかによって表現が変わります。
この感覚がつかめると、授受表現だけでなく、日本語全体の見え方まで変わってきます。
文法を意味から理解し、問題を解きながらしっかり身につけたい方は、
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