導入
「調べる」と「探す」は、どちらも「分からないものを明らかにする」という場面で使われます。
そのため、日本語学習者の中には、次のように考える人も多いでしょう。
分からないことを見つけるのだから、どちらを使っても同じではないの?
確かに、意味が重なる場面はあります。しかし、「調べる」と「探す」では、行動の目的が少し違います。
「調べる」は、情報や内容を確認して、詳しく知ることです。
一方、「探す」は、見つからない人や物、場所などを見つけようとすることです。
意味が近いからこそ、選び方を間違えると、文法的には理解できても、少し不自然な日本語に聞こえることがあります。
まずは、学習者が作りやすい間違いから見てみましょう。
よくある間違い
次の文を読んでください。
インターネットで日本の歴史を探しました。
意味は伝わりますが、日本の歴史について詳しい情報を得たかったのであれば、少し不自然です。
この場面では、次の文のほうが自然です。
インターネットで日本の歴史を調べました。
もう一つ見てみましょう。
なくした財布を一時間調べました。
この文も、意味を想像することはできます。しかし、「なくした財布を見つけようとした」という意味なら、「調べる」ではなく「探す」を使うのが自然です。
なくした財布を一時間探しました。
「調べる」と「探す」は、どちらも答えや対象に近づくための行動です。ただし、何を目的にしているのかが違います。
なぜ不自然に聞こえるのか
「調べる」と「探す」の違いは、行動した結果として何を得たいのかを考えると分かりやすくなります。
「調べる」の目的は、情報や事実を知ることです。
例えば、次のようなことを確認します。
- 言葉の意味
- 電車の時間
- 事件の原因
- 商品の価格
- 歴史や文化についての情報
これらは、対象そのものを見つけたいのではありません。対象についての情報を詳しく知ることが目的です。
一方、「探す」の目的は、人、物、場所、仕事など、求めている対象を見つけることです。
例えば、次のようなものを見つけようとします。
- なくした鍵
- 駅の近くのホテル
- 条件に合う仕事
- 会いたい人
- 読みたい本
つまり、次のように考えると使い分けやすくなります。
- 内容や情報を知りたい場合は「調べる」
- 人や物などを見つけたい場合は「探す」
この目的の違いを意識しないと、「歴史を探す」や「財布を調べる」のような、少し違和感のある文になってしまいます。
自然な言い方
先ほどの誤用例を、自然な日本語に直してみましょう。
誤用例1
インターネットで日本の歴史を探しました。
自然な言い方
インターネットで日本の歴史を調べました。
この文では、日本の歴史そのものを見つけようとしているのではありません。
日本の歴史に関する情報を読み、詳しく知ろうとしています。そのため、「調べる」が自然です。
ただし、次のような文なら「探す」を使えます。
インターネットで日本の歴史について書かれた本を探しました。
この場合、見つけたい対象は「本」です。そのため、「探す」が自然になります。
誤用例2
なくした財布を一時間調べました。
自然な言い方
なくした財布を一時間探しました。
ここでは、財布について詳しく知りたいのではなく、見つからない財布を見つけることが目的です。
そのため、「探す」を使います。
一方、警察が財布の中身や状態を確認する場合は、「調べる」を使うことがあります。
警察は、見つかった財布の中身を詳しく調べました。
同じ「財布」が出てくる文でも、見つけることが目的なのか、内容を確認することが目的なのかによって、使う言葉が変わります。
2つの語の基本的な違い
「調べる」とは
「調べる」は、分からないことについて情報を集めたり、内容を確認したりして、詳しく知ることです。
本、辞書、インターネットなどを使って情報を得る場合によく使われます。
また、医師、警察、研究者などが、原因や状態を確認する場面でも使われます。
言葉の意味を辞書で調べる。
病気の原因を調べる。
電車の出発時間を調べる。
「何について知りたいのか」が重要です。
「探す」とは
「探す」は、見つからないものや、必要なものを見つけようとすることです。
人や物だけでなく、仕事、家、方法、機会などにも使えます。
なくした鍵を探す。
新しい仕事を探す。
静かに勉強できる場所を探す。
「何を見つけたいのか」が重要です。
覚え方のポイント
迷ったときは、次の質問を考えてみてください。
詳しく知りたいのか、それとも見つけたいのか。
詳しく知りたい場合は「調べる」、見つけたい場合は「探す」を使うと、自然な日本語になりやすいです。
例文で感覚をつかむ
例文1
分からない漢字の読み方を辞書で調べました。
漢字を見つけたいのではなく、読み方という情報を知りたいので、「調べる」が自然です。
例文2
図書館で日本語の文法書を探しました。
文法について調査しているのではなく、目的の本を見つけようとしているので、「探す」を使います。
例文3
旅行の前に、京都の天気を調べておきます。
天気に関する情報を確認するため、「調べる」が自然です。
例文4
京都で安く泊まれるホテルを探しています。
条件に合うホテルを見つけることが目的なので、「探す」を使います。
例文5
この商品の値段をインターネットで調べました。
商品の値段という情報を確認しているため、「調べる」を使います。
例文6
もっと安い商品を探して、いくつかの店を回りました。
ここでは、条件に合う商品を見つけることが目的です。そのため、「探す」が自然です。
例文7
医師が痛みの原因を詳しく調べています。
原因を見つけるために、検査や確認を行っています。この場合は、詳しく確認する意味の「調べる」が使われます。
例文8
医師を探しています。
この文では、診察してくれる医師や、会いたい医師を見つけようとしています。そのため、「探す」を使います。
両方使えるように見える場合
「調べる」と「探す」は、同じ場面で使えることもあります。ただし、意味の中心が変わります。
例えば、次の2つを比べてください。
留学できる学校を調べています。
留学できる学校を探しています。
「学校を調べています」は、学校の場所、学費、授業内容、入学条件などを確認しているという意味です。
「学校を探しています」は、自分が留学する学校を見つけようとしているという意味です。
同じ「学校」が目的語になっていても、情報を確認することに重点があるのか、候補を見つけることに重点があるのかで、使う言葉が変わります。
もう一つ見てみましょう。
新しい仕事について調べています。
新しい仕事を探しています。
「仕事について調べる」は、仕事内容、必要な資格、給料などの情報を確認することです。
「仕事を探す」は、実際に応募できる仕事を見つけようとすることです。
助詞の違いにも注目しましょう。
- 仕事について調べる
- 仕事を探す
この形で覚えると、使い分けがさらに分かりやすくなります。
JLPTで間違えやすい選択肢
JLPTの語彙問題では、「調べる」と「探す」が同じ選択肢に出ることがあります。
例えば、次の問題を考えてみましょう。
明日の電車の時間をインターネットで___。
- 探した
- 調べた
- 拾った
- 見つめた
正解は「調べた」です。
電車そのものを見つけるのではなく、出発時間という情報を確認しているからです。
次の問題ではどうでしょうか。
駅でなくした傘を___が、見つからなかった。
- 調べた
- 探した
- 確かめた
- 数えた
正解は「探した」です。
傘について情報を集めたのではなく、なくした傘を見つけようとしているからです。
JLPTでは、単語の意味だけを見ると、どちらも正しそうに感じることがあります。
しかし、文の中で次のどちらが求められているかを考えると、正解を選びやすくなります。
- 情報や事実を確認する行動
- 人や物を見つける行動
また、「インターネットで」という言葉があっても、必ず「調べる」になるわけではありません。
インターネットで近くのレストランを探しました。
この文では、条件に合うレストランを見つけることが目的なので、「探す」が自然です。
道具や場所だけで判断せず、最終的に何をしたいのかを見ることが大切です。
まとめ
「調べる」と「探す」は、どちらも分からないものに近づくための行動ですが、目的が違います。
- 「調べる」は、情報や内容を確認して詳しく知るときに使う
- 「探す」は、人、物、場所、仕事などを見つけようとするときに使う
- 詳しく知りたい場合は「調べる」
- 見つけたい場合は「探す」
似ている単語を正しく使い分けるためには、単語の日本語訳だけを覚えるのではなく、「その行動の目的は何か」を考えることが大切です。
このような意味の近い言葉は、JLPTの語彙問題や読解問題でもよく出題されます。説明を読んで理解するだけでなく、実際の問題を繰り返し解くことで、文脈に合う言葉を選ぶ力が身につきます。
RJT(Rapid Japanese Training)では、JLPT対策の問題を通して、似ている言葉の違いや、自然な日本語の感覚を実践的に学べます。
毎日の短いトレーニングで、迷いやすい選択肢を正しく見分ける力を身につけましょう。