日本語の読解をしていると、意味はなんとなくわかるのに、判断に迷う表現があります。
その一つが、
「ないものでもない」
です。
たとえば、
条件によっては、協力しないものでもない。
この文を見たとき、学習者は少し戸惑うかもしれません。
「協力しない」のか。
それとも「協力する」のか。
結論から言うと、この文は「協力する可能性がある」という意味です。
ただし、強く「協力します」と言っているわけではありません。
「条件が合えば、協力してもよい」
「積極的ではないが、完全に拒否しているわけではない」
という、少し回りくどい肯定です。
この「回りくどさ」こそが、「ないものでもない」を読むときの大切なポイントです。
「ないものでもない」は、弱い肯定を表す
「ないものでもない」は、形だけ見ると否定が重なっています。
できないものでもない。
わからないものでもない。
行かないものでもない。
どれも「ない」が入っているため、否定のように見えます。
しかし、全体としては「完全に否定するわけではない」という意味になります。
つまり、
できないものでもない
→ できる可能性はある
わからないものでもない
→ 少しはわかる
行かないものでもない
→ 条件しだいでは行くかもしれない
という意味です。
ただし、ここで注意したいのは、これは明るい肯定ではないということです。
「できます」
「わかります」
「行きます」
のように、はっきり肯定しているわけではありません。
むしろ、
できると言えばできる
少しはわかる
場合によっては行く
という、控えめで、やや消極的な言い方です。
「できる」とは言い切らない感じ
「ないものでもない」の中心には、「言い切りたくない」という感覚があります。
たとえば、次の文を見てください。
この仕事は難しいが、できないものでもない。
これは、
この仕事はできます。
とは少し違います。
「できます」と言うと、自信があるように聞こえます。
一方、
できないものでもない
と言うと、
簡単ではない
でも不可能ではない
努力すればできるかもしれない
という感じになります。
つまり、「ないものでもない」は、肯定しながらも、そこにためらいや条件を残す表現なのです。
読解では、この控えめな肯定を見落とさないことが大切です。
「わからないものでもない」は、完全な理解ではない
「ないものでもない」は、気持ちや考えを表す文でもよく使われます。
たとえば、
彼が怒る気持ちも、わからないものでもない。
この文は、
彼の気持ちがよくわかる。
という意味ではありません。
むしろ、
完全に同意するわけではない
でも、怒る理由は少し理解できる
という意味です。
このような文では、話し手は相手の立場をある程度認めています。
ただし、全面的に賛成しているわけではありません。
読解でこの表現が出てきたら、
話し手は少し理解している
しかし、強く賛成しているわけではない
と読むと自然です。
「行かないものでもない」は、条件つきの可能性
次のような文もあります。
あなたがどうしてもと言うなら、行かないものでもない。
これは、
行きます。
よりもかなり遠回しです。
意味としては、
本当はあまり行きたくない
でも、強く頼まれれば行ってもよい
という感じです。
ここには、話し手の消極的な姿勢が出ています。
「ないものでもない」は、単なる可能性ではなく、話し手の態度も表します。
そのため、読解では「するのか、しないのか」だけでなく、「どのくらい積極的なのか」まで読む必要があります。
「ないこともない」との違い
「ないものでもない」は、「ないこともない」とよく似ています。
たとえば、
できないこともない。
できないものでもない。
この二つは、どちらも「できる可能性はある」という意味です。
ただし、「ないものでもない」のほうが、少し硬く、文章的で、回りくどい印象があります。
「ないこともない」は会話でも比較的使いやすい表現です。
一方、「ないものでもない」は、評論文・小説・説明文などで、話し手の慎重な判断や複雑な気持ちを表すときに出やすい表現です。
読解では、次のように整理するとわかりやすいです。
ないこともない
→ そう言える可能性はある
ないものでもない
→ 条件やためらいはあるが、完全には否定できない
どちらも弱い肯定ですが、「ないものでもない」は、より慎重で、やや重い言い方だと考えるとよいでしょう。
読解では「否定」ではなく「弱い肯定」として読む
「ないものでもない」を読むときに一番大切なのは、表面の「ない」に引っ張られすぎないことです。
たとえば、
この案にも、評価できないものでもない点がある。
この文は、「評価できない」と言っているのではありません。
意味は、
この案にも、評価できる点が少しはある
です。
ただし、「とても高く評価している」という意味ではありません。
「全面的には賛成できないが、評価できる部分もある」という、限定的な肯定です。
読解問題では、このような微妙な評価が問われることがあります。
特に、筆者の立場を選ぶ問題では、
強く賛成している
完全に反対している
一部は認めている
判断を保留している
のどれなのかを見分ける必要があります。
「ないものでもない」は、多くの場合、「一部は認めている」に近い表現です。
例文で感覚をつかもう
この条件なら、引き受けないものでもない。
→ 条件が合えば、引き受けてもよい。
彼の意見も、理解できないものでもない。
→ 完全に賛成ではないが、理解できる部分はある。
時間をかければ、この問題も解けないものでもない。
→ 簡単ではないが、解ける可能性はある。
その説明にも、納得できないものでもない。
→ 少しは納得できるが、完全に納得しているわけではない。
彼女の判断を批判したくなる気持ちも、わからないものでもない。
→ その気持ちはある程度理解できる。
どの例文にも共通しているのは、「はっきり肯定しない肯定」です。
「できる」
「わかる」
「納得できる」
と言い切らずに、
できないわけではない
わからないわけではない
納得できないわけではない
と遠回しに言っています。
この遠回しな感じが、日本語の読解ではとても重要です。
まとめ
「ないものでもない」は、否定に見えますが、全体としては弱い肯定を表します。
ただし、強い肯定ではありません。
「可能性はある」
「少しはそう言える」
「条件しだいではそうしてもよい」
「完全には否定できない」
という意味です。
読解では、「ない」があるから否定だと考えるのではなく、
話し手は何を少し認めているのか
どこに条件やためらいがあるのか
全面的な肯定なのか、一部だけの肯定なのか
を意識して読むことが大切です。
「ないものでもない」が読めるようになると、日本語の文章に出てくる慎重な判断や、遠回しな態度が見えやすくなります。
RJTでは、このような読解で迷いやすい表現を、例文と解説を通して少しずつ整理できます。
文法の形だけでなく、「話し手がどんな気持ちで言っているのか」まで読み取れるようになりたい方は、ぜひRJTで学習を進めてみてください。