導入
「日本語を勉強するために努力しています」と「日本語の勉強で苦労しています」は、どちらも大変そうな状況を表しています。
しかし、この二つの文は同じ意味ではありません。
「努力」は、自分から目標に向かってがんばることです。一方、「苦労」は、難しいことや大変なことを経験することです。
この違いを理解すると、日常会話だけでなく、JLPTの語彙問題や読解問題でも正しい言葉を選びやすくなります。
まず結論
「努力」は、目標を達成するために、自分からがんばる行動を表す言葉です。
「苦労」は、困難な状況の中で、大変な思いをする経験を表す言葉です。
簡単に整理すると、次のようになります。
- 努力:目標に向かってがんばること
- 苦労:困難によって大変な思いをすること
「努力」は行動に注目し、「苦労」は経験した大変さに注目する言葉です。
意味の違いを整理
「努力」の意味
「努力」とは、目標を実現するために、力を尽くして取り組むことです。
本人が「できるようになりたい」「成功したい」と考え、自分から行動を続けるイメージがあります。
例えば、毎日単語を覚えたり、何度も練習したりすることは「努力」です。
「努力」には、前向きで積極的な印象があります。まだ結果が出ていなくても、目標に向かってがんばっていれば「努力している」と言えます。
よく使われる表現には、次のようなものがあります。
- 努力する
- 努力を続ける
- 努力を重ねる
- 努力が実る
- 努力が報われる
- 努力が必要だ
「苦労」の意味
「苦労」とは、難しい問題や厳しい状況によって、大変な思いをすることです。
自分から進んで行うというよりも、生活や仕事、人間関係などの問題によって、苦しい経験をするイメージがあります。
例えば、外国で生活を始めたとき、言葉が通じず、買い物や手続きがうまくできないことがあります。このような大変な経験は「苦労」です。
「苦労」は否定的な意味を持つことが多いですが、過去の大変な経験を振り返るときには、成長や成功につながった経験として使われることもあります。
よく使われる表現には、次のようなものがあります。
- 苦労する
- 苦労を重ねる
- 苦労が多い
- 苦労が絶えない
- 苦労を乗り越える
- 人に苦労をかける
- 苦労の末に成功する
使う場面の違い
目標に向かう行動には「努力」
試験の合格、仕事の成功、技術の上達など、目標を達成するための行動について話すときは「努力」を使います。
例えば、JLPTに合格するために、毎日問題を解いている場合は「努力しています」と言えます。
- 日本語が上手になるために努力しています。
- 売り上げを増やすために、会社全体で努力しています。
- 目標を達成するには、毎日の努力が必要です。
これらの文では、目標に向かって積極的に行動していることが重要です。
大変な経験には「苦労」
生活上の問題、慣れない環境、経済的な困難などによって、大変な思いをしたことを表すときは「苦労」を使います。
- 外国で仕事を見つけるのに苦労しました。
- 子どものころ、家が貧しくて苦労しました。
- 新しいシステムの使い方を覚えるのに苦労しています。
これらの文では、本人が積極的にがんばったことよりも、問題が難しくて大変だったことに注目しています。
ビジネスでは「努力」がよく使われる
ビジネスでは、会社や組織が目標を達成するために行動する場面で「努力」がよく使われます。
- 品質の改善に努力します。
- お客様に満足していただけるよう、努力してまいります。
- 問題の解決に向けて、最大限の努力をします。
「苦労」は、個人の経験や過去の困難について話すときに使われることが多く、会社の正式な方針を表す言葉としてはあまり使われません。
例文で確認
「努力」の例文
例文1
日本語が話せるようになるために、毎日会話の練習をしています。
これは、日本語を話すという目標に向かって、継続的に努力している状況です。
例文2
彼は長年の努力によって、ついに自分の会社を設立しました。
成功するまで、長い間がんばり続けたことを表しています。
例文3
一生懸命努力しましたが、今回は試験に合格できませんでした。
「努力」は、必ず成功することを意味するわけではありません。結果が出なくても、目標に向かって力を尽くせば「努力した」と言えます。
例文4
彼女の努力が実り、大会で優勝することができました。
「努力が実る」は、続けてきた行動が良い結果につながるという意味です。
「苦労」の例文
例文1
日本に来たばかりのころは、漢字が読めなくて苦労しました。
漢字が読めないため、生活の中で大変な経験をしたことを表しています。
例文2
この資料を集めるのに、とても苦労しました。
資料が見つからなかったり、集めるのに時間がかかったりして、大変だったという意味です。
例文3
両親は苦労しながら、三人の子どもを育てました。
経済的な問題や生活上の困難がある中で、子どもを育てたことを表しています。
例文4
何度も失敗しましたが、苦労の末に新しい商品を完成させました。
「苦労の末に」は、多くの困難を経験したあとで、ようやく結果を出したという意味です。
「努力」と「苦労」の両方を使う場合
一つの出来事について、「努力」と「苦労」の両方を使うこともできます。
例えば、外国で働きながら資格を取った人について、次のように言えます。
彼は慣れない外国生活で多くの苦労をしましたが、努力を続け、資格試験に合格しました。
「苦労」は、外国生活で経験した大変さを表しています。
「努力」は、資格試験の合格に向かって続けた行動を表しています。
つまり、同じ期間の出来事でも、何に注目するかによって使う言葉が変わります。
間違いやすいポイント
「苦労」を「がんばる」という意味だけで使わない
次の文を見てください。
JLPTに合格するために、毎日苦労しています。
文法的に完全な間違いではありませんが、この文では「毎日の勉強が難しくて困っている」という意味に聞こえます。
目標に向かってがんばっていることを伝えたい場合は、次のように言うほうが自然です。
JLPTに合格するために、毎日努力しています。
「苦労しています」と言うと、大変さや困難が中心になります。「努力しています」と言うと、前向きに取り組んでいることが中心になります。
「努力をかける」とは言わない
次の表現は不自然です。
両親に努力をかけました。
人に大変な思いをさせたという意味では、「苦労をかける」を使います。
両親に苦労をかけました。
「苦労をかける」は、ほかの人に心配や負担を与えるという意味の決まった表現です。
「苦労が実る」とは通常言わない
「実る」や「報われる」と一緒に使われやすいのは「努力」です。
- 努力が実る
- 努力が報われる
「苦労」の成果を表したい場合は、次のように言います。
- 苦労の末に成功する
- 苦労が報われる
- 苦労したかいがある
「苦労が報われる」は使えますが、「苦労が実る」は一般的ではありません。
「努力」だけでは大変な経験を表せない
次の文では、「努力」よりも「苦労」が自然です。
子どものころ、家が貧しくて努力しました。
この文では、何を目標に努力したのかが分かりません。貧しい生活による大変な経験を表すなら、次のように言います。
子どものころ、家が貧しくて苦労しました。
JLPTでの見分け方
JLPTの語彙問題で「努力」と「苦労」のどちらを選ぶか迷ったときは、行動と経験のどちらに注目しているかを確認しましょう。
目標や成果が書かれていたら「努力」
次のような言葉がある場合は、「努力」が選ばれやすくなります。
- 目標
- 合格
- 成功
- 上達
- 改善
- 練習
- 続ける
- 実る
- 報われる
例:
夢を実現するために、長い間__を続けてきた。
ここでは、夢という目標に向かってがんばり続けているため、「努力」が入ります。
夢を実現するために、長い間努力を続けてきた。
困難や大変さが書かれていたら「苦労」
次のような内容がある場合は、「苦労」が選ばれやすくなります。
- 慣れない環境
- 貧しい生活
- 難しい問題
- 言葉が通じない
- なかなか見つからない
- 大変な経験
- 乗り越える
- 末に
- 人に負担をかける
例:
留学したばかりのころは、言葉が通じず、買い物にも__した。
ここでは、言葉が通じないために大変な思いをしたので、「苦労」が入ります。
留学したばかりのころは、言葉が通じず、買い物にも苦労した。
「する」の前後だけで判断しない
「努力する」と「苦労する」は、どちらもよく使われる表現です。
そのため、「する」があるだけでは判断できません。文全体を読み、次のどちらを表しているかを考えましょう。
- 目標に向かって自分から行動している
- 困難によって大変な思いをしている
選択肢で迷ったときは、「がんばる」に置き換えられるなら「努力」、「大変な思いをする」に置き換えられるなら「苦労」と考えると判断しやすくなります。
まとめ
「努力」と「苦労」は、どちらも簡単ではない状況に関係しますが、注目する部分が違います。
- 努力は、目標に向かって自分からがんばる行動
- 苦労は、困難な状況で大変な思いをする経験
「合格するために努力する」と言えば、目標に向かう前向きな行動を表します。
「勉強方法が分からなくて苦労する」と言えば、問題によって大変な思いをしていることを表します。
JLPTでは、単語の意味を覚えるだけでなく、どの言葉と一緒に使われるか、文の中で何に注目しているかを確認することが大切です。
RJT(Rapid Japanese Training)では、JLPT形式の問題を解きながら、似ている単語や文法表現の違いを実践的に学べます。
「意味は分かるのに、選択肢で迷ってしまう」という人は、毎日の練習で判断する力を身につけていきましょう。